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2019/03/12

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.43

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.43

3月も半ば、この時期になると年度末という言葉をよく聞くようになります。ただ、“末”という言葉がつくと、個人的にはどうしても寂しい印象が強くなるもの。ほんの3ヶ月前は年末で、本当は新年を迎えることができるという明るい気分になってもいいようなものなのに「また、1年が終わってしまうんだ〜」と、少しばかりシンミリとした気分になってしまう人も多かったのではないでしょうか。そして、この年度末には確定申告があり、還付金が戻ってくる、こないがあります。人事異動なんかも多い時期で、転勤や昇給で生活が大きく変わることも。学生は卒業や進学先、就職先など大きな変化の時。この年度末という節目は一喜一憂がある中で時が流れていくものだと思います。

競輪界では年末のKEIRINグランプリでNo.1が決まりましたが、この年度末は松山記念の最終日にルーキーチャンピオンレースが行われて、113期生のNo.1の座が争われました。宮本隼輔(山口113期)選手が捲りで優勝した訳ですが、実に新人離れした自在性のあるレースセンス持ち主で、類稀なる資質に恵まれているという印象。
お父さんである忠典さん(山口55期・引退)とは私も現役時代に走る機会が多かったのですが、そのお父さんと体型やレースのスタイルが違うので、あまり“二世”とは思えない選手でもあります。でも、何はともあれ、新人の登竜門と言われるレースを勝ったのですから、今後のさらなる活躍を期待したいですね。

今月末には私の地元・大垣にてG2レースの第3回ウィナーズカップが開催されます。
今開催は脇本雄太(福井94期)選手が参加予定なので、その脇本選手のスピードを誰が止められるのか?という開催の流れになりそうです。
脇本選手以外の輪界トップクラスで、優勝候補に名を連ねるであろうS級S班の面々の近走を確認してみると。まず、前年度覇者である武田豊樹(茨城88期)選手は松山記念の初日に落車、最終日まで完走はできたが、決勝にも駒を進められなかったうえに未勝利で終わりました。平原康多(埼玉87期)選手は松山記念で決勝までは進んだものの未勝利に終わる。浅井康太(三重90期)選手は松山記念2日目に落車して途中欠場。村上義弘(京都73期)選手は玉野記念の初日に落車して途中欠場となり、村上博幸(京都86期)選手は前々走の奈良記念で優勝も松山記念は未勝利でした。三谷竜生(奈良101期)選手、清水裕友(山口105期)選手は共に、2月の別府G1全日本選抜2日目の落車以降、欠場が続いています。新田祐大(福島90期)選手は当初より不参加。
現時点で、この中の選手がどれだけ参加可能なのかは分かりませんし、参加したとしても、調子の判断は初日のレースを観ないと判断は難しいところであります。

2019年になってからの記念競輪の優勝者は……大宮記念を制した神山拓弥(栃木91期)選手だけが東日本地区の選手です。選手の勢いが“西高東低”の図式が明らかになっている感。この競輪界にはG1高松宮記念杯という東西対抗に該当する大会もあるため、地区バランスが悪くなってしまうことで、業界としての面白味が薄れてしまうことも懸念されます。ここは目前まで春も近づいてきていることですし、いつまでも冬型の気圧配置である“西高東低”にストップを!この大会での東日本地区の選手の頑張りに期待したいです。

ウィナーズカップの選抜方法に優勝者はもちろんのこと、1着数の多い選手という項目もあります。1着が多いということもあり、自力で戦っている選手や若手が非常に多いという特徴もある大会です。それゆえレースに動きが多いので、観る側としてはとても面白く、オススメできる開催とも言えるでしょう。しかし、予想する側は車券の軸になる選手を絞りづらい、車券購入は難しい開催になっているのも事実です。このように車券予想が難しければ、難しいほど、選手側はレース内容を求められます。期待した選手が「このレースをして負けたのであれば、それは仕方ないよな」と、ファンに思っていただけるようなレース。そう、選手個々が悔いのないレースで終わったのならば、予想が外れたファンもきっと納得して家路につくことでしょう。

前記したように、S級S班のトップ選手たちが絶好調ではないので、脇本選手の独走を許さないように。それこそニュースター誕生があるのは嬉しい誤算、この大会をとにかく盛り上げてくれることを楽しみにしています。

最後に、大垣は私のホームバンクだったということもありますので、少しだけアドバイスを。
大垣バンクは風向きでの有利、不利はありますが、基本的に前が有利だと思って間違いないです。後団に置かれて、7番手からの捲り追い込みはほぼ決まらないと、認識して良いバンクです。

地元開催のビッグレース参加は現役時代も緊張していました。今回は解説での参加ですが、今からメチャクチャ緊張しています(苦笑)。参加選手同様、私も気を引き締めて頑張っていきますので、読者のみなさん、競輪ファンのみなさんも是非、開催を盛り上げて下さいますように!

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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