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2019/03/29

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.44

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.44

平成最後のG2レース、大垣でのウィナーズカップは“先行日本一”と、呼ばれている脇本雄太(福井94期)選手の圧勝で幕を閉じました。脇本選手はナショナルチームの活動のため、国内でのレース参加はこの大会が今年初でした。それでも、年末のグランプリ以来の日本の競輪参加ということを感じさせない連日の圧勝っぷり(準決勝こそ2着でしたが、これは展開の綾であったと言っても良いと思います)はお見事でした。上がりタイムも良く、展開に恵まれて勝った訳ではなく、まさに実力で勝利した4日間のレース内容。よって圧勝という表現にさせていただきました。

開催前にSS級の選手たちの近況について触れておきましたが、やはり、ケガには勝てない結果になってしまいましたね。
浅井康太(三重90)選手は前走の松山記念で落車して、決してベストな状態での参加ではなかったと思いますが、決勝戦に進出。その決勝戦では脇本選手の番手を選択し、追走して2着ゴール。連日、脇本選手の番手を回った選手は離されていたので、浅井選手としては仕事をやりきった感があったのではないでしょうか。
昨年のウィナーズカップの優勝者・武田豊樹(茨城88期)選手は今年に入り、まだ1勝しか挙げていませんでした。このことからも調子が上がってきていないと思っていましたが、結局、未勝利で終わりました。はい、もう少し時間を要しそうな雰囲気です。
平原康多(埼玉87期)選手は決勝戦へ進出を逃したもののシリーズ2勝。ただ、昨年末のグランプリでの落車以後、記念開催での優勝はなく、以前のような迫力を感じなくなっているのも事実です。練習もシッカリするタイプですし、研究熱心な選手なので、近いうちに復調するはずです。
グランプリチャンピオンの三谷竜生(奈良101期)選手は別府G1全日本選抜競輪で落車。ケガからの復帰戦でしたが、未勝利で終わり、動き自体も無理して間に合わせて出場してきたという印象でした。
村上義弘(京都73期)選手も玉野記念での落車によるケガの影響で、本調子には程遠い動きでした。ですが、気持ちで走るタイプなだけに今の体調での頑張りが伝わる走りはしていました。
村上博幸(京都86期)選手は今年に入り記念優勝2回(松阪、奈良)と、良い状態をキープしています。でも、初日に脇本選手の番手で追走できなかったので、今後の課題が明確になったのではないでしょうか。
清水裕友(山口105期)選手は三谷選手と同じく、別府G1全日本選抜競輪での落車で骨折。復帰初戦でしたが、もう少し時間がかかる印象の動きでした。

競輪選手は「ケガがなければ最高の仕事」だと、私はこのコラムでも何度か書いています。でも、ケガをしてしまった後にキッチリ復調させるのも競輪選手の仕事。強い選手として、長く走り続けるにはとても大事なことなのです。

今後、競輪界が盛り上がるにはスーパースターの出現が必要不可欠。今開催を終えて、率直なところで“脇本選手一強時代”がきているようにも思えます。しかし、その脇本選手に対抗する選手が出てきてこそレースは盛り上がり、競輪界も盛り上がるのです。今開催の決勝戦の自力選手は全て20歳代の選手でした。ここに希望はあるので、若手選手の活躍をもっともっと期待したいところ。

ガールズケイリンコレクションでもナショナルチーム所属の小林優香(福岡106期)選手が約8ヶ月ぶりの国内競輪に出場にして、児玉碧衣(福岡108期)選手や石井寛子(東京104期)選手を寄せつけずに優勝しました。
ナショナルチームに所属している選手は特別な人間でなく、同じ人間であります。東京五輪を視野に入れているのはもちろんのこと、今年もこれから始まる短期登録で来日する強い外国人選手たちに追いつけ、追い越せ。日々、世界レベルの戦いを制する努力を重ねているのです。ナショナルチーム以外の選手たちも現状に満足することなく、常に目標を高いところに設定して欲しいもの。個々のレベルが上がることにより、それぞれのレースのレベルが上がり、競輪界全体が盛り上がっていくのですから。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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