TOP > コラム > 「全プロ」で浮き彫りになったこと

コラム

一覧へ戻る

コラム

2017/06/01

Norikazu Iwai

「全プロ」で浮き彫りになったこと

「全プロ」で浮き彫りになったこと

「全日本プロ選手権自転車競技大会」なるものをご存知だろうか?

つい先日の5月29日(月)、和歌山競輪場で行われた。
その前の2日間、5月27日(土)〜28日(日)……これは競輪ファンなら知っている「全日本プロ記念競輪」が開催された。S級のトップクラスが集結するG3、記念以上の大会である。最終日の日曜は2,500人を超えるファンが集まった。人気レーサーの平原康多が和歌山初登場など、ファンとしてはワクワクしたことだろう。
車券発売があった2日間は盛り上がったことは事実だが、月曜日の「競技」は果たしてどうだったか。入場者数は1,051人というのは主催者発表である。しかし、どう見てもスタンドで観戦していたファンはそれほど多くなかった。この数字は純粋な入場者数なのか?おそらくではあるが、関係者やスタッフの数も入っていたのではないか。主催者発表と言う言葉は便利なもので、様々な分野の大会やイベントでも盛ることはある。五輪に3大会連続で出場した渡邉一成をはじめ、リオ五輪代表の中川誠一郎、脇本雄太。さらに言えば日本の自転車競技史上最高の銀メダルを獲得したアテネ戦士・伏見俊昭、井上昌己、北京五輪の銅メダリスト・永井清史も参加していた。競泳で言うならば、北島康介に萩野公介、瀬戸大也、陸上なら為末大に桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥が参加するようなもの。
これがヨーロッパだったらスタンドはファンで埋め尽くされていただろう。だが、競技が浸透していない日本では無理な話し。スプリントの駆け引き、スピード感に圧倒される1km/TT(タイムトライアル)、苦悶の表情も見せる選手たち。あの姿を見れば、自転車競技の素晴らしさが分かるはずなのだが。

関係者は口をそろえて「新しいファンを獲得したい」と言う。しかし、現状で競輪は難しい。ならば、自転車競技に興味を持ってもらい、そこから競輪につなげると思わないのか。「そんなことはない。新しいファン獲得に向け努力している」と言う。では、言わせてもらおう。どうして大会を月曜日にするのか。家族連れは来られない。結局、車券の売り上げが期待できる土、日曜に「全プロ記念」を行う。「競技」はあくまでも後付けのセレモニーとかイベントとしか思えない。ファンサービスも車券発売ありきだ。
今回、車券発売のある「全プロ記念」の主催は和歌山県。「競技」の主催は「日本プロフェッショナルサイクリスト協会」。競輪業界は団体が多すぎる。まぁ、これは日本競輪選手会と同じだと思ってもらっていい。「お前(筆者)の言っていることは的はずれだ。主催者は違うし目的も違うんだから」。そう言われるかも知れない。しかし、そんなことはファンには関係ない。「全プロ」で走った選手が翌日は「競技」に参加している。まどろっこしい言い方をしているかもしれないが、本当にこの業界を良くしたいと思うならば団体の垣根を越えて団結しなければいけないと言うこと。同じ目的を持つ、それが言いたいのだ。口先だけのファンサービスに新しいファン獲得。20年以上前から聞かされ続けてきた。「全プロ記念」が2日間、「競技」が1日。分けるのではなく一つの大会として運営してみてはどうか。目先の収益にとらわれずに金・土曜に車券発売。日曜に「競技」。これならコアな競輪ファンも自転車競技に興味のある人間も足を運んでくれるはずだ。

Text/Norikazu Iwai
Photo/Perfecta Navi・Joe Shimajiri

ページの先頭へ

メニューを開く