TOP > コラム > 恋して競輪ハンター

コラム

一覧へ戻る

コラム

2019/06/30

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 39 Hunting

毎年のことになりつつありますが、先日、7月にデビューを控えた新人選手とお話しをする機会に恵まれました。日本競輪学校(現・日本競輪選手養成所)を出たばかりで、まだ純朴さが残る姿のみなさんとお話しを伺っていると、競輪選手としてどんな選手になっていくのか?将来をとても楽しみに感じます。
競輪界にいると、そんな風に輝きながら近づく新しい期の気配を感じるのと同時に、決して簡単には語れない終わりの気配も感じなければなりません。そう、6月末は期末。年に2回、いわゆる“代謝”が行われる時期です。毎回のことながら、考えさせられることが多い時期であります。

話しは少し変わりますが、毎年、プロ野球の世界で再起を懸ける男たちの番組が放送されますよね。あの番組が放送していると、つい観入ってしまうのですが、少年の頃から追ってきた夢、味わった栄光、諦められない思い、家族の存在……1人の人間が夢を追い続けながら生きるということはこれだけ苦しいものなのかを察すると、毎回、涙なしでは観られません。きっとどんな世界でも何かを目指すことにはたくさんの苦労や代償があるはずです。ただ、競輪に置き換える中で、頭に入れておかなければならないのは『競輪選手は1度、引退すると……2度とはなれない職業』だということ。苦労と努力を積み重ねて、そのような競輪選手という職業に就いたからには、公正で公平なルールと制度の範囲で、できる限りのことをしてでも選手という職業や生き方に食らいつくことを私は否定しません(することができません)。また、どんな生き残り方をしたとしても、そこにその選手の生き様が感じられることは、人生とも例えられる競輪を見るうえでのある意味で醍醐味の一つではないでしょうか。

生き残りを懸けて、レースに出ることを“勝負駆け”と、言ったりします。この“勝負駆け”は代謝争いだけではありません。級班入れ替えの選定材料にされる期の競走得点を少しでも上げたい選手による“勝負駆け”もあります。選手はS級、A級、チャレンジと、クラスによって獲得できる賞金も変わってきますし、級の中でも1班と2班では初日特選に乗れるかどうかというところにも影響してくるそうなので、疎かにはできないところでしょう。公式的に“勝負駆け”情報が出回らないのが残念ですが、記者さんたちによる取材記事やマメなファンの方々の情報を頼りに、私は車券予想を行います。そう、私たちファンはクビか生き残りか、もしくはクラスの維持、昇降級を懸けた“勝負駆け”の選手にお金を賭けることができるのです。金網の向こうでは選手の生き様が、そして、金網のこちら側では、その“勝負駆け”をどう判断して、どのように賭けるかで、ファンの生き様が浮かび上がるようにも感じます。
私の場合はそんな噂を聞き付けると、ついその人の“勝負駆け”が成功する方に賭けてしまうことが多いです。自分の買い目を眺めながら私は意外と楽観的なのかも知れないと、考えたりもします。自分自身を振り返ってみても、学生時代の夏休みの宿題は学校が始まる直前に終わらせるような、ギリギリでなんとか生きてきたタイプでもありました。でも、そんな思いで賭けてレース観ていると、失敗していることの方が多いようにも感じます。命を懸けた勝負の世界は夏休みの宿題を徹夜で間に合わせるような、そんな甘い考えでは通用しないに違いありません。それで「世の中甘くないなー!」と、反省しながらも……また、結局のところ“勝負駆け”のレースを(成功する方で)買ってしまう。あぁ、何と学ばない人間なのでしょうか。

冒頭の話しに戻りますけれども、別れもある期末が過ぎると、出会いと始まりの7月。新人選手のデビューや新たな級班での競走に夢に目を輝かせ、高みを目指す選手の走りに、競輪ファンとしても夢を追っていきたいですね!競走得点も参考にならない昇降級組、未知数の新人、競輪ファンとしての眼力が問われるような気がします!

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

ページの先頭へ

メニューを開く