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2019/10/09

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.57

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.57

“地元何割増し”という言葉があるように、選手は地元の競輪場で、なぜか好結果を出すことがあります。でも、それは持っている力以上のものが出ている訳ではありません。普段は身体に負担をかけ過ぎないようにリミッターが効いているのですが、地元開催で持っている力を全て出し尽くした結果なのでしょう。
私も現役当時、地元開催が終わると数日間はグッタリしていたのを思い出します。選手のコメントで「応援が力になりました」と、よく聞きますが、地元開催は集中力が増して、持てる全ての力を発揮することができるため、力以上のものが出たように感じるのかも知れませんね。

今、自国開催のラグビーのワールドカップが盛り上がりを見せています。日本チームはまさに何割増しかのパワーが出ていますよね。ここまで活躍することを想像していたでしょうか?まさに地元パワー、恐るべしです。そして、日本の活躍が続くにつれてマスコミはもちろん、ライトなファンが増えて各地で盛り上がっていく__。こう見ていくと、競輪にも何かのキッカケで流れがきても不思議ではないと思いませんか?来年は自国で五輪が開催されます。その五輪で地元パワーという目に見えない力に後押しされ、競輪選手が活躍すれば業界としても盛り上がるキッカケになるでしょう。

さて、今月は前橋競輪場にてG1寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントが開催されます。 寛仁親王牌は地区プロを経て、全プロ競技大会の成績から出場者が選抜される大会ですが、今開催はナショナルチームメンバーの参加がありません。大会の特徴を考えると、何となく違和感がありますが、来年のオリンピックに向けてのことなので、仕方がないことだと割り切る必要があるでしょう。

この大会で注目してみたい選手を挙げると、前述した“地元パワー”も加味される小林泰正(S2・群馬113期)選手です!小林選手は6月の取手G3でのA級レインボーカップファイナルに勝利し、S級へ特別昇級を果たしました。そして、すぐさま7月の弥彦G3、8月西武園G3で連続して決勝進出。決勝に1回でも乗ることさえ大変だと思う選手がいる中で、連続優参をするのだから“何か持っている”選手なのでしょう。そう思って、私はその後も小林選手に注目していたのですが、落車も遭ったりで欠場続き。おまけに地元G1直前の松戸競輪場で開催された千葉G3はシステム障害により開催順延(結果、小林選手は欠場)に。私自身も天候による開催延期は経験したことがありますが、システム障害での開催延期は経験したことがありません。このあたりも小林選手は何か持っている選手なのかも知れないと、思わされるところです。

寛仁親王牌と言えばG1のビッグレースですから、簡単に結果を出すことは難しいことです。それでも、地元開催で目に見えないパワーを貰い、何か持っている男として頑張ってくれると、そう信じながら注目したいと思います。

少し触れましたが、先日、システム障害によって全国の競輪開催が中止になりました。この10年で3回ほどシステム障害による開催中止があったそうですが、全国の競輪開催が2日間に渡って中止になるのは珍しいのではないでしょうか?今はネットが普及していて、競輪場に足を運ぶこともなく、電話・インターネット投票で競輪を楽しむファンが増えているのは確かです。その一方で全国の競輪場を旅しながら「旅打ちしている」というファンもいます。また、千葉記念から寛仁親王牌へ中1日になってしまった選手は調整過程が狂ったでしょうし、選手の調子はどうなのか?というファンの皆様のG1予想にも迷いが生じることでしょう。
今後、ファンの皆様にこのようなご迷惑を掛けないように、最善の策を考えていただきたいものです。

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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