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2020/04/07

Koichi Moriizumi

『森泉宏一の実況天国』Vol.30

『森泉宏一の実況天国』Vol.30

続いては『ヘッドホン付け忘れ事件』……これはタイトルからして、そのままなのですが。

ある日のレース。
レースが始まり、いつものように喋り始めます。
「水面上、第〇レースが始まりました。現在、風は……」

“いつものように”と、書きましたが、一点だけ通常とは違う光景が。
そう、マイク付きのヘッドホンを装着しないままで実況を始めていたのです。
「えっ!ヘッドホンって声の返しがないのですか?」
何のためのヘッドホン?と、思われる方もいるでしょう。
返しというのは……簡単に言うと、喋っている自分の声を自分で聴くこと。
もちろん、オートレース・野球・サッカーなどの実況の場合は自分の声が聴こえます。
ですので、ヘッドホンを付け忘れていればすぐに気付きます。
しかし、ボートレース実況の場合、ヘッドホンから聴こえてくるのは審判さんたちのやり取り。
レース中はピットアウトから違反がないかなど、数人の審判さんが常に会話しています。
それを聴きながら実況をしつつ、失格などのアクシデントに対応します。
従って、自分の声は聴こえません。
それもあり、その日のレースではヘッドホンに気付かず喋り出しました。

その日は私の師匠である野村達也さん(@tatsuya_nomura)もご一緒しており、僕が座る実況席の後ろでレースを観ておりました。
ヘッドホンを付けていないことに真っ先に気付いたのは野村さん。
レースなので声こそ出していませんが、
「ええええええええええっ!!!!」
と、口と目を大きく開いていたそうです。(野村さん談)
そりゃ、そうです。
何も気付かずに平然と、喋り続ける後輩が目の前にいるのですから。
ヘッドホンは実況席にあるフックに掛けられたままの状態。
野村さんはすぐに僕の肩を叩き、その瞬間、私も絶句。
周りにバレないように、そっと、ヘッドホンを装着し、何事もなかったように振る舞いながら実況。
レース後、お偉いさんから呼び出されました。
「さっきのレース、実況の音量がものすごく小さかったんだけど」
「えーと、その……音量メモリの数値が低くなっていました!すみません!」
と、嘘をつき、その場を逃れました。
スイッチは入れていたので、辛うじて声は聴こえていたそうです。
もしも野村さんがいなかったらと思うと、今でもゾッと、する出来事です。
ちなみに貰い事故で、野村さんもご一緒に謝罪の場まで同行していただきました。
野村先生、その節は申し訳ございませんでしたm(_ _)m

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