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2020/08/07

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.74

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.74

毎月、月末になると__支払い口座の残高確認と同時に、電話投票の口座に入金することが私のルーティンになっていました。ところが、先月末は入金する必要がありませんでした。記念開催が7車立て9レース制になって、当たるようになったから?いや、違います。穴党の私にとって7車立てのレースは面白味が減り、車券を買う機会が減っていたからでした。たまに買うレースでも3連単で1着、2着を決めて、3着を全通り選んでも5点で済みます。9車立ての場合は同様に買えば7点。当然のことながら7車立ては点数が少なくて済むため、買い目が減りますし、予想がハズレたとしても減っていくお金のペースはスローになりました。はい、私のような人が増えれば車券の売り上げは徐々に減っていくことでしょう……。そうなってくると車券を買っていただくファンの人数(分母)を増やすこと、それ抜きでは今後の売り上げ増加を求めることができません。

7月から7車立ての記念開催が始まり、小松島、弥彦、福井、富山と、行われてきました。冒頭で7車のレースは面白味がないと書きましたが、私が『穴党』であって高額払い戻しが望めないからではありません。レースの流れに駆け引きがなく、単調になってしまっているからです。
このメンバーで勝つためには周回中にどこから攻めて、誰かが切った後に先行していく__。または誰かを一旦、前に出して、捲りポジションを取っていく__。元・競輪選手としてはそのようにアレコレ作戦を考えることが楽しいですし、予想する側も流れを考え、車券の予想に繋げながら楽しめる。それが競輪の面白いところだと思っていました。ギア倍数が上がった時もレースが単調になり、競輪の魅力が半減したと、思っていましたが……7車立てはさらに単調なレースが増え、個人的には“半減の半減”くらいにさえ思っています。「当たるから面白いギャンブル」としては受け入れられていくのかも知れませんけれども!?

ちなみに3連単で1万円を超える、俗に言う万車券=高額払戻金は以下の通りでした。
小松島記念/初日=1回・2日目=1回・3日目=2回・最終日=4回
弥彦記念/初日=1回・2日目=2回・3日目=3回・最終日=1回
福井記念/初日=1回・2日目=1回・3日目=3回・最終日=2回
富山記念/初日=2回・2日目=3回・3日目=2回・最終日=5回

僅か4回の開催で判断するのは早計ではありますが、本命党の方は主力がバラける初日と2日目で勝負。穴党の方は3日目と最終日が面白いレースになるような気がします。

記念決勝にて高額払戻金(3連単=14,630円)になった富山記念。このレースは競輪というものを凄く考えさせられるレースでした。そして、レース後もアレコレ意見の出る内容であったように思います。 
人気は開催参加で唯一のS級S班・村上博幸(京都86期)選手、その番手を回る稲垣裕之(京都86期)選手。この京都コンビの折り返しが一番人気に推されました。競走得点もこの2人が上位なだけに頷けました。けれども、通常ならば自力のある稲垣選手が前、マーク選手の村上選手が後ろを固めるのが普通なのですが、この決勝は村上選手が前回りを志願。 ここで予想する側は考えます。近況、自力の決まり手を持っていない稲垣選手よりも村上選手本人が自分の方が好調だと考えて、前回りを選択したのか?村上選手が前回りの方が確実に良いポジションを取れると、読んだから?
私には『ラインの前を回る選手は後ろを回る選手ができないことをするために前を回る』という持論があります。ということは「先行もあり」を意味しているのか?
これにより私自身は稲垣選手の1着固定の予想をした訳ですけれども、レースは村上選手の先行を稲垣選手が番手捲りする形で優勝を果たしました。

この結果を受けて「ここまで最終バックを取っていない村上選手が先行するなんて誰が予想できるのか?」という声があるのは事実なのかも知れません。ですが、これも人間が走っている競輪を予想するうえでは必要なこと。だからこそ競輪は難しいのでしょう。地元の京都向日町記念(9月3日~6日)は稲垣選手の後ろを走る村上義弘(京都73期)と博幸、村上兄弟に注目したいです。

今月は名古屋競輪場で第63回G1オールスター競輪が開催されます。4日目、準決勝の日には『レジェンドレース』があり、私も参加します。6年もの間、自転車から離れ、毎日の運動もしておりません。そこで心不全や心筋梗塞を恐れ、少し自転車に乗っているのですが……「こりゃ、無理だ__」
この苦しさに耐え切れなくて、選手を辞めたこと思い出しました。日々、苦しい練習をしている選手たちを改めて尊敬します。6月のG1高松宮記念杯競輪に続いて、オールスター競輪も無観客での開催になりました。ファンのみなさんの前で走れないことは非常に残念ですけれども、スピードチャンネルで放送予定ということなので、是非、楽しんでいただきたいです。
コロナ禍は続いていますけれども、今、できる行動の中でオールスター競輪を盛り上げていきましょう!

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2018年末、三谷竜生(奈良101期)に抜かれるまでは年間獲得最高賞金額=2億4,434万8,500円の記録を持っていた
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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