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2020/10/06

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 69 Hunting

ここ最近は『競輪とは……』という漠然としたテーマについてズーッと、考えています。
きっかけは2週間程前の伊東G2共同通信社杯の優勝インタビュー。1着でゴールした山田英明(佐賀89期)選手が失格となり、その後ろを回っていた中本匠栄(熊本97期)選手が繰り上がりで優勝したのですが、その優勝インタビューは喜びを全面に出したものではなく、複雑な表情で、言葉を選びながらの受け答えでした。「ヒデさん」と、名前を呼び、ラインを組んでいた敬愛する先輩選手の失格があったら、そうなってしまうのも仕方ないことなのでしょうけれども__大怪我からの復活、初のG2制覇なのにということを思うと、切ないような気持ちにもなり、泣けてしまいました。

今回はラインを組んだ選手の1着失格ということで、イレギュラーな結果でこそありましたけれども、競輪では往々にして勝った選手が喜べないということはあります。
「前を回ってくれた〇〇選手を残せなかったので……」
「後ろの先輩に迷惑を掛けてしまったので……」
このような言葉をインタビュー中に聞くことは珍しくありません。共同通信社杯を終えた直後は勝った人が喜べないなんて変だ!失格はダメだ!と、感情的になって、そう思っていました。しかし、フッと、冷静になると、嬉しそうではない1着インタビューは失格に関わらず、普段のレースでもよくあること。私自身がそれを当然のように受け入れて、競輪を見てきていたことも事実です。勝者が喜べない(または喜びを表に出してはいけない)という空気であったり、「勝って叱られ、負けて褒められる」というファンからの評価。他の公営競技やスポーツに詳しくはないため、分かりませんが、これらは競輪独特のものなのでしょうか?競輪はなぜ勝っても喜べない?なぜ負けても評価が上がる?そんなことを考えていたところ、冒頭に書いた通りで『競輪とは……』という答えの出ないテーマを考えるに至ったのです。

こんな壮大なテーマに関して、短期間で答えが見つかる訳がありません。ただ、一つ言えることは「競輪って、ややこしい」ということ。そもそも明確なルールではないライン戦、ラインで戦うことによって生まれる人間心理、義理や情、単純な勝敗以外のところに価値を見出してしまうマニアックなファンたちなどなど……ややこしすぎます(笑)。確かに新規ファンには難しいのかも知れません。しかし、ドップリと、“競輪沼”にハマっていると、そのややこしさも魅力だと思うようになるのですよね。

10月からはミッドナイト競輪限定で、競走得点順に1番車から並ぶという新しい形のレースが始まっています。より分かりやすく、よりシンプルに、というのがコンセプト。単純で分かりやすいものが好まれる今の時代に、複雑化しすぎた今までの競輪はそぐわないのかも__。しかし、単純化されすぎた結果、想像力が働かずにSNSなどで悲しい出来事が起こるのも今の時代です。たった7つ、9つの数字の組み合わせの中に、無限の想像を膨らませること。そして、組み合わされた人と人との間に繊細で人間臭いドラマを思い描くこと。そういった想像力を働かせて、育むことがむしろ今の時代に必要なものなのではないかと、考えずにはいられません。

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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