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2020/10/07

Norikazu Iwai

“スター候補生”山口拳矢

“スター候補生”山口拳矢

将来が楽しみな本当の意味での“スター候補生”といって構わないだろう。誰かと言うと、山口拳矢(岐阜117期)だ。山口拳矢__ピンと、来なくても“山口幸二氏の息子”だと言われたならば分かるだろう。そう、ヤマコウの次男である。兄・聖矢も115期として日々、頑張っている。“スター候補生”とは簡単に言いたくはないが、山口拳也は本物の匂いがプンプンする。
DNAは言うまでもない。父はグランプリを2回、制するなど、長く業界のトップに君臨していた。何よりも日本競輪選手会岐阜支部の支部長として『戦う支部長』とか『史上最強の支部長』などと、ファンからは呼ばれていた。ただでさえ激務の支部長職にありながらもトップクラスを維持。普通ならばデスクワークをすると、成績は下降線をたどるものだが、山口幸二氏は違った。一体、いつ練習をしているのだろう?とも言われていた。マスコミ対応も最高に丁寧であった。現在の山口氏の評論家としての活躍を見ればそれも頷ける。人間的に魅力がタップリなのだろう。

父親のことを書き過ぎたので、息子・拳矢の話しに戻ろう。5月・小倉、6月・伊東のルーキーシリーズ2020を無傷の6連勝で終えると、チャレンジレースも9連勝で、A級2班に特別昇班した。A級1・2班戦も8月の四日市F1で敵なし。続く名古屋F2も3連勝で、S級特別昇級に王手。特昇場所となった9月の和歌山F1も危なげなく3連勝。デビューから1度も負けることなく、S級の仲間入りを果たしたのである。和歌山での表彰式には父親がサプライズで駆けつけ、インタビュアーに。息子は堂々の受け答え、父親の方が感極まっている印象を受けた。この山口親子の共演で思い出したのは2002年のG1高松宮記念杯競輪。幸二氏の弟・山口富生(岐阜68期)がG1初優勝を飾った時だ。表彰式に向かう車の運転手を兄が買って出る。今はもうない大津びわこ競輪場が大歓声に包まれた。テレビ画面越しでも熱狂ぶりは伝わってきた。

また、話しが横道に逸れてしまったが、拳矢のスピードはS級でも十分に通用するだろう。通用するどころかS級の上位クラスと戦っても、良い勝負になるに違いない。それだけのセンスを感じる。決まり手を見ても、今のところは先行と捲りは半々。タイプ的にはダッシュを活かした捲りの方が合っていそうだ。そして、スターの要素である面構えが良い。少しヤンチャな雰囲気も良い意味で、ファンの共感を得られるだろう。

S級のデビュー戦は10月8日~10日の大垣F1に決まった。参加メンバーはG1寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントを直後に控える中、村上義弘(京都73期)などのビッグネームも。相手に不足なし、この3日間、どのようなレースを見せてくれるのか?今から楽しみである。自分のスタイルを貫いて、連勝記録を伸ばすのか?それとも、ライン重視の競走をするのか?
深谷知広(愛知96期)以降、“スター”と、呼べる選手は失礼ながら見当たらないように思える。期待され、マスコミに持ち上げられた選手は数多くいた。しかし、現在は普通のS級選手に収まっている感は否めず、大舞台での活躍は見られない。今後、拳矢は必ず偉大な父親と比べられてしまうが、それも決して悪いことではない。プロは注目されてナンボの世界だ。今後、しばらくの間も“ヤマコウの息子”というフレーズは切り離せないだろうけれども、“父親がヤマコウ”になった時こそ本物のスター選手・山口拳矢の誕生になるに違いない。

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