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2020/11/25

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

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恋して競輪ハンター 72 Hunting

小倉G1朝日新聞社杯競輪祭を挟んでしまったので、少し前のことになってしまいますけれども。平塚競輪場で行われた『サテライト横浜カップ』前検日に群馬の中島将尊(群馬105期)選手とお話しする機会がありました。意外に思われるかも知れませんが、群馬支部の選手とはニコ生やトークショーイベントのMCが取っ掛かりにもなり、平塚競輪場に斡旋された時はよくお話しを聞かせていただいています。
中島選手と言えば10月に地元・前橋で行われたG1寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメントに初出場し、4日間、単騎で立ち回りG1での初1着も果たしました。「単騎、好きです」と、ノンビリかつ優しい口調で語る中島選手からは『ザ・イマドキの子』という印象を受けます。

私はこのコラムのプロフィールにも書いてありますが、好きな選手のタイプは徹底先行。人力で走る競輪において誰よりも長い距離を、風を受けながら駆け、レースの主導権を譲らない走りを見ると、本当にシビれます。また、周りに昭和の時代から競輪を愛してきた方々が多い影響もあるかも知れませんが、先行選手のラインは3番手を固めた選手も活きることも多いので、捲りの選手よりも人情味や男気なんかを妄想できるところも好きな理由です。
そんな徹底先行好きからすると、選手としての中島選手へのトキメキ度は正直、そう高くありません。不器用なベテラン先行選手までストライクゾーンに入っている私にとっては逆に、イマドキ自在選手はハンティング対象外です。
中島選手の初日はそれこそ私の大好きな徹底先行の青森の木村弘(青森100期)選手ラインと東京の岡田征陽(東京85期)選手ラインとの3分戦。木村選手の番手には名マーカー・内藤宣彦(秋田67期)選手と千葉の江守昇(千葉73期)選手が続いて、とても強力でした。関東も別々になり、中島選手にとっては戦い難い構成であったと思います。それでも、前検日にお話しを伺った際、彼はこう言いました。「別線になったからには岡田選手にも楽な競走はさせない」と。勝負の世界の大前提は自らの1着、どんな関係性であろうとも割り切った競走は当然のことなのですが、ラインを組む競輪において今日の敵は明日の味方でもあります。それでも、ハッキリした口調でそう語る中島選手にはそんな迷いや遠慮は一切、感じなかったのです。中島選手なりの『競輪道』に触れた気がした瞬間でした。

実際のレースは発言通り、まずは後方の岡田選手に最初に前を切らせます。そして、その上を切り、徹底先行の木村選手を待つ展開に。で、カマシてきた木村選手の番手・内藤選手のところへ飛びつき!しかし、相手は名マーカー内藤選手です。結果は飛びつけずに中島選手は7着で、予選敗退となりました。
「相手は内藤選手だぞ。取れる訳ないだろ!」と、言う人もいました。私も何も知らずにレースを見たら、そう思っていたことでしょう。でも、前検日に中島選手の『競輪道』に触れた後では、たとえ負けるかも知れない相手にも勝負にいった気概に、結果はどうあれ頑張れと、エールを送らずにはいられませんでした。

まだ26歳、スポーツ選手の中でも選手寿命の長い競輪選手ということを考えれば、若手に見えるかもしれません。しかし、競輪選手になってもう6年。一戦、一戦の中で中島選手が得てきたものが現在の中島選手の『競輪道』を作っているのだと思います。これからの選手人生の中で変化するもの、変わらずにあるもの、それをこの先も伺っていくことが楽しみです。

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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