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2021/07/30

Koichi Moriizumi

『森泉宏一の実況天国』Vol.60

『森泉宏一の実況天国』Vol.60

ここ数年、7月に入っても梅雨のような気候が目立っています。
例年7月は高校野球の実況で各地へ向かうシーズンなのですが、今年は更に天候不順に見舞われる年に。今年最初の実況担当予定でした千葉大会が中止。翌日の西東京大会は、個人的に初めての東京大会で胸躍らせていましたが、こちらも雨。さらには、毎年担当している茨城大会も初日から中止に。西東京大会については、放送が始まり中止コメントを読んだだけで担当終了。縁に恵まれた都大会。来年は是非「試合」で喋りたいものです。

高校野球で思い出すのは、先日業界初となるミッドナイト記念レース「チャリロト杯ミッドナイトチャンピオンカップ」で優勝した前田淳(山陽27期)選手。前田選手は高校時代に甲子園出場経験を持つ、元高校球児です。その後、群馬県にある大学に進学して野球部に入り、その時にオートレースの存在を知ったそうです。余談ですが、私も大学2年まで野球をしていまして、学校は違いますが、なんと前田選手の大学時代の監督と私の大学時代の監督が同じ方という偶然が! 話をしていると同じ監督ということに気付き、話が盛り上がったことを思い出しました。
さて、雨で思い出すのが、オートレース実況を担当していた頃に、初めて雨が降る中でのレースを実況した時のことです。

場所は伊勢崎オートレース場。梅雨時期はすでにナイターレースの時期ですが、その日は明るい時間帯が曇り空。そこからナイター照明がつくと一気に大雨に。急な雨に対しての心構えとして、スピードが落ちるので慌てる必要はないと考えていましたが、敵は別のところに存在。雨×ナイターで競走車が反射して見えにくいのです。とくにバックストレッチ側、実況席から最も遠くなる位置での見辛さはかなりのもの。さらに、2番車(黒)、4番車(青)、6番車(緑)が光の具合で同じ色に見えてしまう。3番車(赤)と8番車(ピンク)も同じような現象に。
これは困りました。
というのも、公営競技の実況をしていると、勝負服などの色を見て反射的に番号が口に出てくる習慣があります。私がボートレース実況の研修をしていた頃、現在、前橋競輪などで実況をされている平山信一さんから、「電車に乗っている時など、車窓から見える物の色を見て、何番!と瞬時に言えるようにトレーニングする方法があるよ」と教えて頂き、電車に乗る時にそれを実践。これは場所を問わずにできることもあり、かなりの効果を発揮するトレーニングで、今でも癖でやってしまいます。
そんなこともあり、色を見た瞬間に番号が口に出てしまうので、色が違った場合は逆に危ない場合もあるのです。

伊勢崎に戻ります。
どうしたものかと考えていましたが、幸い伊勢崎オートのバックストレッチには大型ビジョンが設置されており、バックに入ったその目線でビジョンに目を向けて実況すると見えやすいことに気が付き、事なきを得ました。

「実況席に設置されているモニターを見ればいいのでは?」
というご意見もあります。確かにその方が安全。しかし私の場合、以前のコラムでも記しましたが、走路から目を離すのが怖いタイプ。レース場毎でモニターの位置も違い、場合によってはかなりの目線の移動を強いられる場合もあります。その目線のブレが怖いので、どうしてもという場合以外、極力見ないようにしていました。
久々にレース実況について記してみました。もう2年以上前のことですね。
時折「もうレース実況はされないんですか?」「またどこかで聴きたいです」と、ありがたいお言葉を頂きます。冥利に尽きます。
こればかりは縁やタイミングなので、自分からどうこうできるものではないのかなと考えています。

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