ニュースター山口拳矢
9月20日に幕を閉じたG2「第37回共同通信社杯」でニュースターが誕生した。優勝したのは岐阜117期の山口拳矢。父親は言わずと知れた、KEIRINグランプリ2度のVを誇る山口幸二氏(評論家)だ。父親のデビュー当時を知っている筆者が思うに、息子は父親より強い。時代背景や競輪界もスピード重視になってきたとはいえ、インパクトという点では、やはり息子に軍配が上がる。
4日間の山口のレースを見ると、筆者的には初日の一次予選が最も良かったと思う。最終ホーム前から一気に先行態勢。山口には捲りのイメージがあるので、これだけ早く先頭に立つのは珍しい。結果は末の粘りを欠き4着だったが、今大会の山口はひと味違うという印象を受けた。二次予選は8番手からの捲り。準決勝は後方に置かれたが、徐々に位置を上げ、直線で外を伸びた。
そして決勝である。山口の真骨頂ともいうべき、勝負に対する執念が見られた。平原康多の内をしゃくるなど、道中から厳しい位置取り。しかし、最終的には7番手。新山響平が捨て身の先行策を見せ、2番手には新田祐大という二段駆け態勢となり、これを捲るのは苦しいなと思って見ていたが、新田のブロックをかいくぐり優勝を成し遂げた。勝負にタラレバは禁物だが、もし新田がブロックせず自分のタイミングで番手捲りを放っていたなら、結果はどうであっただろう。
この優勝はデビューして479日のG2最速優勝記録となった。従来は2010年に深谷知広がヤンググランプリを勝った524日というのだから、大幅に更新したわけだ。獲得賞金も5,000万円を超えて、ランキング8位に躍り出た。今後、山口がKEIRINグランプリに出場、G2ではなくタイトルと呼べるG1を勝つためには、もう少し勝ち上がりの段階では先行して欲しいと思う。もちろん、人それぞれのスタイルがあるので一概には言えないが、期待しているからこその言葉でもある。
売り上げに関しては目標の60億円を超える60億5,035万1,200円だった。だが、前年の伊東は76億8,711万9,500円を売り上げている。大体において、目標額の設定が低すぎると感じる。前年が76億円なのだから、せめて70億円に設定してもらいたかった。以前にも書いたが、公営競技である以上、マイナスは許されないという考え方がそうさせているのではないか。コロナの状況も昨年と全く同じではないが、それでも危機的な状況は同じである。せっかく山口という新星が現れたわりには、盛り上がりに欠ける大会になったと言っても過言ではないだろう。
山口の台頭でグランプリ争いは混沌としてきた。残りのG1は10月の寛仁親王牌と11月の競輪祭のみ。東京五輪組の脇本雄太、新田祐大も9月25日現在ではグランプリ圏外である。グランプリに出場するためには残り2つのG1制覇へ、目の色を変えてくるのは確かだ。その中で、山口がどういう戦いを演じるか、見てみたい。
Text/Norikazu Iwai
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【岩井範一の過去コラムはこちら】
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