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2021/10/09

Norikazu Iwai

PIST6で感じたプラス作用と今後の課題

PIST6で感じたプラス作用と今後の課題

新しい競輪として注目された250mバンクでの競走が、10月2日に千葉競輪場で始まった。正確に言うと千葉競輪場ではなく、TIPSTAR DOME CHIBA(ティップスター ドーム チバ)。さらに大会名は「PIST6 Championship」(ピストシックス チャンピオンシップ)。従来の競輪と違い、1レースは6人で、勝ち上がりも異なる。競技を意識し、国際ルールに準拠して行われた。要するに、真っすぐ走るということである。純粋な力で勝敗が決する。ブロックなどは一切なし。前回も書いたが、果たしてどうだったのか。

オープニングは無観客で行われたため、残念ながら足を運ぶことができず、ウエブでの観戦となった。結論から言うと、見る分にはそれなりに楽しめる。スポーツとして考えればありだろう。しかし、ギャンブルと考えると物足りなさを感じた。競輪の魅力の一つに駆け引きがある。だが、PIST6には駆け引きがあまりない。時代の流れ、新しいファンを開拓するためなら成功かもしれない。競輪を知らなかった人間が興味を持つことは、業界としてはプラスに作用するだろう。単勝が復活したのもいいことだと考える。

競輪が衰退している原因は、当たりにくさにある。推理してもなかなか、思うような結果にならない。それが逆に競輪の魅力でもあり、ギャンブル好きが最後に行き着くところが競輪と言われる所以でもある。同じ公営競技のボートレースは6艇で争われ、インコースが圧倒的に有利とされる。配当は低くても当たりやすく、それが売り上げに表れている。PIST6も6車ということで、配当は低くても的中率は上がる。確かに固すぎる結果もあったが、高配当も続出した。

大会の雰囲気はヨーロッパで行われている「シックス・デイ」を意識している。これはバンク内に客席を設け、そこで食事もできる、いわばイベント。大音響で盛り上げ、アナウンスもDJがする。日本でもJKAが中心となり、伊豆ベロドロームで「トラックパーティー」が行われている。ただし、お金がかかる以上、過剰すぎる演出はいかがなものかと思う。イベントとして楽しむならいいかもしれないが、やはりギャンブルである。いくら主催者がスポーツ色を全面に押し出しても無理があり、勝負とイベントは並び立たないのではないかと考える。

開幕シリーズは雨谷一樹が優勝し、初代のチャンピオンに輝いた。雨谷は元々、五輪を目指していたし、長らくナショナルチームで活動していた。五輪出場は成らなかったが、250mバンクには慣れているし、走り方が分かっている。参加選手を見た時から、雨谷の優勝は予測できていた。売り上げに関しては2日間で6億2388万円。筆者の予測をはるかに超えた金額だ。正直、ここまで売れるとは思っていなかった。この数字だけ見れば成功と言っていいが、ただし「ご祝儀相場」とも考えられる。参加選手を見ても小粒感は否めない。競技性を謳うならやはり、脇本雄太や新田祐大、深谷知広がオープニングから参加して欲しかった。課題は参加選手だろう。今後、超一流と言われる選手の参加が条件になろう。

Text/Norikazu Iwai

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