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2022/02/07

岩井範一

二刀流に挑んだ原大智

二刀流に挑んだ原大智

北京五輪が開幕した。冬の五輪と競輪界の結びつきは深い。現在まで、五輪のメダリストから競輪に転向したのは3人。1人目は1998年長野五輪スピードスケートショートトラック500mで銅メダルを獲得した植松仁(引退)。植松は「他競技で優秀な成績を収めた者」からなる「特別選抜試験」初の合格者だった。体は小さかったが持ち前のガッツで、S級で活躍した。
2人目は植松と同種目で長野五輪金メダルの西谷岳文(京都93期)。西谷の場合は、選考対象の期間が過ぎていたため、特別選抜枠ではなかった。西谷もまた、機動力を生かしたレースでS級でも善戦。今はA級であるが、奮闘が続いている。そして、もう1人は2018年平昌五輪フリースタイルスキーモーグル銅メダリストの原大智(宮城117期)だ。

この原は今回の北京五輪にも出場した。2大会連続のメダルを狙っていたが、惜しくも準決勝で敗退してしまう。モーグルの勝ち上がりは複雑だ。予選を一発でクリアした原だが、最後の6人には残れなかった。それも7番目の得点というから悔やみきれない。実際にテレビで観戦していたが、得点がもっと高くてもいいように見えた。あくまでも素人目だから何とも言えないが、採点競技の難しさを改めて感じた。原は北京を最後にモーグルを引退し、競輪一本に絞るらしい。
ただ競輪界は、もう少し原をアピールしても良かったのではないか。スポンサーとの兼ね合い等もあるのかもしれないが、原はれっきとしたプロ選手である。それなのに、所属には競輪のけの字も出てこないことに違和感を覚えた。競輪とモーグルの「二刀流」ができたのも、業界が理解を示したからだろう。メディアの扱いも、直前になってやっと話題に上った程度だと記憶している。銅メダルを獲得した堀島行真が注目されるのは理解できるが、もっと原をプッシュしても良かったと考えている。競技中ではなく、五輪が始まる前から競輪選手であることを世間にもっと知らしめてほしかった。始まってから「二刀流」と言われても、注目度はそれほど上がっていなかったように思える。このあたりは、戦略ミスだろう。今後、原がトップクラスで活躍できるかどうかは現時点では分からないが、競輪一本に絞ったのなら、言い訳は一切できないはずだ。

五輪からの転向で最も成功したのは武田豊樹であろう。2002年のソルトレークシティー五輪スピードスケート500m8位の実績を引っさげて、競輪界に飛び込んだ。ここまでG1優勝7回、2014年にはKEIRINグランプリ制覇の実績を残している。近年はやや成績が落ちているが、それでも武田はビッグネームである。
ここまで冬の五輪ばかり書いてきたが、夏の五輪に出場した選手も競輪界にはいる。業界内には、それだけの逸材がいるということだ。ただし、武田に続くような超一流の選手がまだいないのは残念でならない。競輪というのは、それだけ過酷な競技であるということだろう。原が武田のような大きな選手になることを期待したい。

Text/Norikazu Iwai

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