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2022/10/06

森泉宏一

『森泉宏一の実況天国』Vol.83

『森泉宏一の実況天国』Vol.83

25歳でボートレース実況を始めて以降、勉強のため、各公営競技のレース実況を聴くようになりました。
ルールは分からなくても、同じような場面での言い回しなど、様々な実況アナウンサーを参考にさせていただきました。

そんな中、実況デビュー当初から、ひとつだけ気になっているフレーズがあります。

それは、
「3番手に上がって参りました!」
この「参りました」の部分。

このフレーズに以前から違和感を覚えていました。
「参りました(参る)」とは「行く」の謙譲語。謙譲語は尊敬語の裏返し。
へりくだる意味の表現を、こちら側が使うことで、あちら側を立てる(高く置く)ことになります。

これに当てはめると、こちら側が「実況」、あちら側が「選手」となるはず。
選手(あちら側)が3番手に上がったことを立てなければならない。
そうなると「3番手においでになった」「いらっしゃった」と、なるのか……? おいでになった(笑)?
あれ、そもそも立てるとは、なんだろう……。
うーん、よく分からなくなってきました。正しい敬語は、いまだによく分かっておりません(苦笑)。
ただ、どうしても違和感が拭えないのと、正解が分からず、私自身はどの競技でもこの「参りました」は使用しませんでした。

この「参りました問題」。いつか正解を導き出したいと考えております(こんなこと考えているのは、私だけかもしれませんが……)。

飯塚オート

さて、実況といえば、先日から飯塚オートにて新しい実況アナウンサーの方がデビューされましたね。
私は面識がないのですが、なんでも私とほぼ同世代とのことで、この年齢から新たなフィールドに飛び込むというのは勇気が必要なことです。
その勇気、応援したくなります。
実況を聴きながら、自分のオートレースやボートレース実況デビューから初期の頃を思い出しました。

最初の頃は、ただ順番を伝えているだけ。
「先頭は誰、2番手は誰、3番手は誰」
これの繰り返しでした。
始めたばかりは、こうなっても仕方がないです。
そして、ここに選手の特徴や勝負駆けなどが分かってくると、格段と変わってきます。

オートレースであれば……
・抜きにくい選手
・外しか走らない選手
・試走タイムが出ない選手
・スタートの早い、遅い
・スピードはあるけど捌きは?
・逃げならこの選手!
・急な雨で対応できる選手
などといったところでしょうか。

「おお、インコース入ったよ! この人!」
「雨降ってるのに頑張ってるよ!」
みたいなテンション、気持ちの部分も加わって、それが声に乗っていきます。

もちろん選手の力関係。これはオッズにも表れますから、高配当になりそうな時と、本命決着では盛り上がりも自然と変わってきます。若い選手が内から捌けるようになったシーンを初めて見た時なども、高揚した実況になるはずです。

そういう意味では、私も伊勢崎オートで実況を担当させていただいた頃より、選手の特徴などが分かってきた今の方が、当時より「上手い実況」ができるのでは?という思いはあります。
あとは数をこなすこと。しかも、本番で。

ボートレース実況の研修をしていた頃。私は現地で練習を重ねては、先輩アナウンサーに録音した実況を聴いてもらう作業を繰り返していました。
すると当時、多摩川ボートレース場で実況を担当されていた大ベテランの方から、
「本番やらないと上手くならないんだから、早く1回、本番で喋っちゃいなよ」。
そんな鶴の一声で、当初の予定よりも早いデビューとなりました。

デビュー実況のボロボロぶりは、ここでは割愛しますが、それでも練習では分からなかった課題が見つかり、まさに「100回の練習よりも1回の本番」が示された瞬間でした。

飯塚の新しい実況の方が、今後どれくらいの頻度で実況されるのかは分かりませんが、1レースでも多く経験していただきたいところです。あとは、真似をするのが最も早く上達する方法だなと。上手い人の真似をして、下手になるはずがない。ただ、これは真似する人を誰にするのかにもよりますが(苦笑)。選ぶところが重要になりますね。

今回は柄にもなく、かなり偉そうなことを書いてしまいましたけれども(笑)。
1日も早く「飯塚の声」になっていただきたいという思いを書き記しました。

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