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2021/04/27

P-Navi編集部

シクロクロス全日本選手権(女子エリート)

シクロクロス全日本選手権(女子エリート)

前日のレースの影響で、泥が掘り返されており、乾き始め、さらに重くなった泥区間は、乗り切るべきか、降りて押すべきかの判断が求められる。同時に、前方が転倒や降車した選手で塞がれた場合、抜きどころがなくなり、大きなタイムロスを強いられることになる。選手数がまだ多いスタート後、まもなく現れる泥区間は非常に重要であり、スタートには緊張感が高まった。
その注目のスタートで波乱が起きた。スタート直後、大本命の今井が大きなトラブルに見舞われたのだ。


女子エリートのスタート。先頭を行く松本(TEAM SCOTT Japan)

第1コーナーで、今井のバイクの前輪が、松本のバイクの後輪に触れ、停止してしまった。今井は両足をつき、仕切り直しになったことで失速を強いられ、最後尾まで順位を落とし、このまま泥区間に突入することに。前方に上がることもできず、最強の優勝候補は、ここで大幅なタイムを失った。このタフなコースにおいて、この失速は致命傷だ。
先頭を行くのは小林、これを松本、輿那嶺が追う。


最後尾まで下がり、厳しいスタートとなった今井美穂(CO2bicycle)

誰もが絶望を感じ、敗北の可能性を意識した今井だが、そのメンタルが折られることはなかった。圧倒的なパワーと熟達したテクニックで、前を追う。あっという間に、表彰台が見える位置までポジションを上げた。


ランニング力も高く、先頭を独走する強さを見せた與那嶺恵理(OANDAJAPAN)

前方ではオフロードのテクニックも有するが、舗装道路上でのスピードに強さを持つ輿那嶺が、うまく乗車とランニングを組み合わせながら、前2名を追い上げ、かわし、単独で先頭を行く展開に持ち込んだ。


悪路の中、バイクを担ぎ、ランニングで目前にまで迫った輿那嶺を追う

今井は、驚異の走りで2位に浮上。3周目の上り階段で輿那嶺をかわし、ついに先頭へ躍り出た。タフなコースで疲労も見え始めた輿那嶺は追い上げをかけるが、今井に追いつくことはできなかった。
今井は毎周回ピットインし、バイクを交換。今井が刻むスピードは衰えることがなく、じわじわと後続との距離も開いていく。


大きな声援を受け、安定した走りで順位を上げてきた小林あか里(信州大学)

この後方では、小林が順位を上げ、3位の位置をキープしていた。


大失速から奇跡の逆転劇を見せ、独走で優勝を決めた今井

タイム差20秒で最終周回に突入。集中力を切らすことなく、今井はハイペースのまま最終周回をこなす。湧き上がる喜びや安堵を噛み締めるように、感動的な独走でフィニッシュラインを越えた。


ゴール後、泣き崩れる今井


健闘をたたえあう今井と輿那嶺

厳しい状況に追い込まれても諦めず、しっかりと自分を見失わず、優勝を勝ち取った今井。2021年の東京五輪で選手活動に終止符を打つことを予定しており、今回が最後の全日本選手権だった。2019年は五輪準備のため、シクロクロスの全日本選手権への出場を見送っており、2020年どうしても手に入れたいタイトルだった。


最後の全日本で獲得した女王の座。ダブルタイトルとなった

今井は表彰台でも涙を見せ、ピットに入り、自分を支えてくれたメカニックへの感謝の思いを語った。3連覇を遂げたMTBの全日本選手権とともに、ダブルタイトルを手に入れる最高の結果となった。

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【結果】女子エリート(4周回)
1位 /今井美穂(CO2bicycle)43:50
2位 /與那嶺恵理(OANDAJAPAN)+0:22
3位 /小林あか里(信州大学)+2:30
4位 /唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)+3:09
5位 /松本璃奈(TEAM SCOTT JAPAN)+4:18

写真:Satoshi ODA、編集部

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