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自転車競技

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2021/06/29

P-Navi編集部

第9回榛名山ヒルクライムin高崎

第9回榛名山ヒルクライムin高崎

群馬県高崎市で「第9回榛名山ヒルクライムin高崎」が5月16日に開催された。
これは「ハルヒル」の愛称で親しまれてきた榛名山の特設コースを駆け上がるヒルクライムイベント。小学校3年生からチャレンジできる初心者コースも設定され、幅広い年齢層の支持を受けた大人気のイベントであり、前回大会の参加者は6,500名を超えていた。昨年は新型コロナウィルスの感染拡大を受け、開催中止。今年は、スタート時の選手間のスペースを確保するなど運営の変更を行うと同時に、例年前日に企画されていたタイムトライアルレースや前日イベント、レース後の表彰式などを中止するなどプログラムを絞り込み、徹底した感染防止対策を計画した上で開催を決めており、3,500名ほどのエントリーを受けていた。

ところが、4月、5月と時を追うごとに、国内の感染拡大状況が悪化。関東エリアの1都3県に緊急事態宣言や、まん延等防止重点措置が発出される事態に。厳しい判断を迫られた実行委員会だが、対象地域に住む参加者には参加料を全額返金するという条件での出場辞退を要請した上で、開催を決定するという苦渋の決断をすることになった。
だが、その後、群馬県内でも開催地を含む10の市町にまん延等防止重点措置が発出され、さらに多くのエントリー者に対し、辞退をお願いせざるを得ない状況になってしまった。「辞退」はあくまでお願いであり、エントリーされた方々がこの要請をどう受け止めるか。そして何名が大会に参加するのか、見えない状況のまま、当日の朝を迎えることになった。
苦難はまだ続く。開催日が迫るにつれ、天気予報が悪化、前日の段階で、予報は雨を示していたのだ。これまでずっと晴天に恵まれてきた大会なのだが、当日早朝に事務局がコースでの天候調査を行い、朝4時に開催可否のアナウンスを行うという、異例づくしの展開になった。
この日、受付がオープンし、実際に手続きと検温等のチェックを終え、スタートに並んだ参加者は、501名のみだった。


スタート直前までマスクを着けて待機


今年も富岡賢治高崎市長が駆けつけ、全参加者を見送った

参加者にはスタート直前までマスクの着用がルールとなっており、全参加者はマスクをつけた状態で、待機場所からスタートエリアに移動する。例年より大幅にスタートの整列の横方向の隊列を減らしていたのだが、全参加者が状況を理解し、前後左右に広い間隔を保った上で、静かに待機。指示に従い整然とスタートした。走行時のマスク着用の決まりはなかったのだが、マスクを着けたままスタートしていく参加者の姿も見受けられた。


周囲との距離を保ちながらスタートしていく参加者たち

メインのカテゴリーとなる榛名湖コースに加え、榛名神社コース、初心者コースの3カテゴリーがあるのだが、すべてを合計しても、スタートしていく参加者の数は、例年の1割にも満たない。この光景を見て、1年以上も続く異常事態の重さと、この状況下での開催が実現した奇跡、さらに関わる皆の思いについて、しみじみと考えさせられた。


駆け上がる参加者たち。この榛名神社を越えたところから激坂区間が始まる


雨に濡れる新緑の中、ゴールに向け、力を尽くす

ヒルクライムは、前回のリザルトと比べることで、自己の成長や状況の変化を測ることができ、毎年の「自己と向き合う機会」と位置づけ、恒例の挑戦として臨む参加者も多い。参加者はこの春の榛名山の特設コースで、それぞれが今年の自分のベストに挑んだ。


例年激戦となるエキスパートを制した長澤優樹さん。ゴール付近は霧に包まれていた


一人一人が自分と向き合い、山頂を目指した。達成感ぱピカイチ

今年、榛名湖コースでは、先頭が計測開始ラインを越えた瞬間から計測が始まるエキスパートの部では長澤優樹さん(41分26秒489)、それぞれがラインを越えたところから計測する一般の部では男子は吉田愛斗さん(41分07秒812)、女子は長野安那さん(57分15秒564)が最速タイムとなった。近年、表彰台争いは37秒台だったのだが、今年は全体的に落ち着いたタイムが多かったようだ。今年はエキスパート参加者の人数も極めて少なく、スピードが上がらなかったことや、参加自粛が多かったこと、全力でリザルトに挑むというよりは、皆で走行する空間を味わいながら登坂した参加者も多かったのだろう。


ゴール後、下山を待つ参加者たち。走りきった皆の表情は明るい


大会初の雨の下山に。皆が注意深く下り、大きなトラブルは起こらなかった

多くの参加者がレース中か、待機中から雨に見舞われ、雨の中の下山になったのだが「例年よりも注意を払い、安全走行を徹底、決して事故やトラブルを起こさないように」という大会のお願いに同調するように、レース中も、下山も、事故はゼロ。自転車で降らず、用意された下山バスを利用する参加者も多かったそうだ。
下山してきた達成感あふれる表情の参加者が次々と榛名体育館にやってきて、ボランティアスタッフたちの拍手に迎えられ、完走証発行ブースに向かって行く。ルールに関するトラブルも起こらず、皆が抱えていたさまざまな懸念は、懸念のまま消え、大会は幕を下ろした。


高崎のグルメを楽しめるブースが参加者たちを出迎えた

例年はゴール後に汁物のふるまいなどがあったのだが、今年は感染症対策から、多数を対象としたふるまいは断念。だが、ゼッケンに付いた金券で飲食品を購入できるブース(出店者にはPCR検査を事前に実施)は例年通りに設置され、参加者には高崎のグルメが提供された。
この日、開催を支えるべく集結したボランティアは約600名。参加者よりも多くのボランティアが駆けつけたことになる。
ハルヒルは、コースの走破満足度とは別に、地元の参加者への歓迎が手厚く、参加満足度の非常に高い大会だという声を多く聞く。「一度参加したら止められなくなる」と語る参加者もおり、リピーターも多い。
参加者たちも、非常にマナーがよく、実行委員会、ボランティアの方々も臨機応変に対応し、ほぼ混乱もないまま、講じられる限りの感染防止対策を施し、このイレギュラーな開催を実現、大会を来年につないだ。

来年のハルヒルは記念すべき第10回の節目となる。今年の開催で、来年に参加した方、辞退した方、思いはさまざまだろうと思われるが、「来年こそは、皆が集える通常開催を」は、皆の合言葉になった。感染状況の今後が見通せず、イベントやレースの開催判断の「正解」はわからないまま。主催者の苦悩や負担はいかばかりかと思いはかる。
自転車関連では、昨年秋頃からイベントが復活し始めたのだが、これまでの動きの中で、「密」を作りにくい自転車の場合、対策を徹底し、参加者の合意と協力を得れば、安全を確保してのイベントの開催は、かなり現実的であるということも見えてきた。感染状況が早く落ち着くことを強く願うと同時に、自転車を活用し、皆がリスクの少ない形で屋外での活動を楽しめる方法についても、多方面での検討が進んでくれることも祈りたい。

画像:高崎市、編集部

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