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2021/07/10

P-Navi編集部

Jプロツアー第7戦「群馬CSCロードレース6月大会」

Jプロツアー第7戦「群馬CSCロードレース6月大会」

JBCFシリーズの最高峰リーグであるJプロツアーの第7戦「群馬CSCロードレース6月大会」が6月12日、群馬サイクルスポーツセンターで開催された。コロナ禍でレースのキャンセルも続き、同じ会場での3戦連続開催となり、新たな試みを導入しての開催となった。

この大会は、サーキットを27周する162kmという長い設定で競われる。だが、このサーキットを逆回りで設定することになったのだ。当然、上りと下りが逆になり、「心臓破り」とも表されていたキツい上りは下りへと変わるのだが、難度が下がるわけではない。これまでより、足を休められる区間が減り、じわじわと疲労が来るコースプロフィールへと変わったという。
また、参加選手に関しても変更があった。JCF又はUCIの競技者ライセンスを持ち、Jプロツアーライダーステイタスを満たす選手たちが、所属チームが今季のJBCFには加盟していなくとも、3大会までJプロツアーに参加できる「セレクションレース制度」が新たに導入されたのだ。コロナ禍でレースが減り、出場レースを模索している選手たちへ走る機会を提供したいというJBCFの取り計らいで創設された制度である(制度利用者はオープン参加であり、所属はセレクションチームと記する)。
このレースには、MTBで夏の五輪出場を決めている山本幸平(セレクションチーム・ドリームシーカーMTBチーム)、昨年海外チームへ移籍した岡篤志(セレクションチーム・NIPPO DELKO One Provence)らがこの枠を利用しエントリー。別リーグ(JCL)に参加している宇都宮ブリッツェンなどのトップチームからも、複数の国内現役ロード選手が参戦した。
今回は周回数も多く、連勝しているTEAM BRIDGESTONE Cyclingからは、トラックレースでの海外渡航後の隔離期間を終えた選手たちもツアーに再合流。顔ぶれも、コースも変わり、どのような展開が生まれるのか注目が集まった。

逆方向に走ることで生じてしまう危険をなくすため、フィニッシュに向かうルートはバックストレート側を使用し、コースはスプリント勝負となっても危険の少ない上りゴールが設定された。
Jプロツアーの赤いリーダージャージはホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)、U23の白いリーダージャージは山本哲央(TEAMBRIDGESTONE Cycling)が着用している。前戦までとは異なる顔ぶれがラインナップし、「逆回り」レースがスタートした。


バックストレートを逆方向に向けてスタート。新鮮な眺めだ

早々に抜け出したい選手たちからアタックがかけられる。ここから16名の集団が形成された。


16名の集団が形成された。先頭には今季で引退を宣言している山本幸平(セレクションチーム・ドリームシーカーMTBチーム)の姿も見える

ここには、リーダージャージのトリビオ、小林海(マトリックスパワータグ)、渡邉歩(愛三工業レーシングチーム)、ジロ・デ・イタリアにも出場経験のある石橋学、冨尾大地(以上CIEL BLEU KANOYA)、井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)、MTBを主戦場とする沢田時と徳田優(以上TEAM BRIDGESTONE Cycling)、山本幸平らが顔を連ねた。力のある選手を多く含み、人数も多い。メイン集団との差はたちまち4分以上まで開いた。
中盤に入り、連勝を守りたいTEAM BRIDGESTONE Cyclingがメイン集団の先頭を固め、集団の引き上げを始めた。


U23リーダーの山本哲央、橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)らが懸命にペースアップを図る

トラックのオムニアムで東京五輪出場を決めている橋本英也(TEAM BRIDGESTONE Cycling)らも献身的に前を引く。差は2分まで縮まった。だが、このまま先頭集団を捕らえることはできなかった。各チームが先頭集団に選手を送り込んでいることもあり、ペースアップの協調体制がうまく機能しなかったのか、再び差がじわじわと広がってしまったのだ。これで、先頭集団の逃げ切りが濃厚になっていった。だが、17名の集団はまだあまりにも大きい。終盤に差し掛かる頃から、勝ちを意識した選手の動きが盛んになり、アタックがかかり始め、先頭集団内の調和が乱れてくる。


冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)が先頭集団からアタック、独走に持ち込んだ


冨尾を追い、形成された4名の集団

ラスト6周、先頭集団から冨尾がキレのあるアタックを決める。集団を引き離し、単独で差を1分まで開いた。このアタックで集団はバラバラになり、中から小林、沢田、井上、渡邉の4名が先行、冨尾を追った。


冨尾を捕らえ、カウンターアタックを決める小林海(マトリックスパワータグ)。ここから誰も寄せ付けない独走が始まった

残り3周となったところで、追走は冨尾に追いつくが、共に追ってきたメンバーが離れているのを見て小林がアタック。沢田と井上は追ったが、勢いに乗り快走する小林に及ばない。


悠々とフィニッシュラインを越える小林

小林はこのまま最後まで独りで逃げ切り、独走のままフィニッシュラインを越え、Jプロツアー初優勝を決めたのだった。


3名の表彰台。2、3位には小林を追った沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)、井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)が入った

表彰台で小林は、先行する冨尾選手を捕らえる際、好機が訪れたと感じたために想定していたより早く独走に持ち込んだ、と最後の局面について語った。「ミスをしないよう、一周一周集中し、前に行くことを心がけた」と自分の動きを振り返る。逆回りルートの方が自分の強みを発揮できると感じたそうだ。「次戦の広島に向け、気持ちを切り替えて臨みたい」とインタビューを締めくくった。


リーダージャージを守ったトリビオ

これまでのツアーで、集団内で圧倒的な存在感を放ってきたフランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)が、ナショナル選手権のために母国スペインへ帰国、展開の中で、久しぶりにチームの強烈な存在感が薄れた感があったが、レースを終えてみれば、小林が優勝し、トリビオは揺らぐことなくリーダーの座を守っている。ランキングの1-2位はトリビオ、マンセボとマトリックス勢が占め、3位の岡本隼(愛三工業レーシングチーム)とトリビオの間には510ポイントもの差がついており、改めて盤石の体制を示すことになった。


U23ジャージは山本が守った

山本がU23ジャージを守り抜き、次点の湯浅博貴(EQADS)との差は40ポイント。6月19、20日に同会場で予定されていた全日本選手権も延期となり、レース間隔が開くことになった。ピーキングが非常に難しいシーズンとなってしまったわけだが、選手たちは次戦にどのような調整で臨むことになるのだろうか。セレクションレース制度を使い、レースに飢えた思いがけない選手が登場することも考えられる。次戦の開催が楽しみだ。

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【結果】群馬CSCロードレース6月大会 162km
1位/小林海(マトリックスパワータグ)4時間2分43秒
2位/沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)+1分19秒
3位/井上文成(弱虫ペダルサイクリングチーム)+2分1秒
4位/冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)+2分13秒
5位/岡本隼(愛三工業レーシングチーム)+2分23秒
6位/西村大輝(セレクションチーム※オープン参加)+2分23秒

【敢闘賞】
冨尾大地(CIEL BLEU KANOYA)

【中間スプリント賞】
1回目/安原大貴(マトリックスパワータグ)
2回目/石橋学(CIEL BLEU KANOYA)
3回目/安原大貴(マトリックスパワータグ)
4回目/ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

【Jプロツアーリーダー】
ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)

【U23リーダー】
山本哲央(TEAM BRIDGESTONE Cycling)

画像提供:一般社団法人 全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)

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