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2021/11/02

P-Navi編集部

全日本選手権ロードレース2021(男子)

全日本選手権ロードレース2021(男子)

10月22~24日に広島森林公園特設コースにおいて開催された全日本選手権ロードレース2021。24日の最終日には、マスターズと注目の男子エリートが開催された。男子エリートはサーキットを15周する184.5kmの設定。例年の全日本と比べると、3分の2程度の長さである。より活発な展開になることが予想された。

※全日本選手権ロードレース2021(女子)のレポートはこちら

参戦したのは108名。今年は海外チームに所属する選手の参戦が少なく、UCI(世界自転車競技連合)のチームカテゴリーの中で最高位となるワールドチームランクからは、唯一中根英登(EFエデュケーション・NIPPO)のみが参戦した。他、海外籍のチームからは岡篤志、織田聖(NIPPO-Provence-PTSConti)の2名が参加している。さらに、参加規定を満たしたクラブチーム所属のアマチュア選手たちこのトップレースに数名参加していることも特徴のひとつだ。

前大会の勝者・入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)はディフェンディングチャンピオンの印である1番ゼッケンを着け、スタートラインについた。前大会は2019年の開催だったが、UCIの規定で次の勝者が決まるまでチャンピオンジャージを着用せねばならないため、入部は2年間、日の丸のジャージを着続けることになった。今年このチームに移籍した入部がチームジャージをレースで着用する光景は非常に新鮮だ。

2年ぶりの全日本選手権を制し、新たにチャンピオンジャージを手に入れるのは、果たして、どの選手だろうか。定刻である午前11時、レースがスタートした。

早々にはげしいアタックの掛け合いが起こる。この中で抜け出したのは風間翔真(シマノレーシング)。協調する選手が現れず、一人旅の形になったが、この風間の抜け出しを集団が容認し、1分半ほどのタイム差が付き、レースはいったん落ち着くことになった。


集団から抜け出し、独走する風間翔真(シマノレーシング)。この逃げは約70km続いた


メイン集団の前方を固め、集団をコントロールする愛三工業レーシングチーム

メイン集団の前方は、愛三工業レーシングチームのメンバーが固め、ペースのコントロールを始めた。愛三工業レーシングチームと、一人逃げ続ける風間の態勢は変わることなく、風間は淡々と一人で逃げ続けた。


長く一列に伸びる集団。全日本選手権は、他のどのレースにもない緊張感が漂っている

後半に入り、チーム右京 相模原などが牽引に加わり、少しずつペースが上がり、差が縮まっていく。
10周回目に入り、ついに風間が集団に吸収された。キナンサイクリングチームが前方に出てペースアップし、選手たちのふるい落しに入る。


キナンサイクリングチームも前方に出てペースアップ

この間を縫って、冨尾大地(CIEL BLUE KANOYA)が飛び出して、単独で先頭に立つ。終盤の展開に向け、緊張感が漂うが、冨尾はほどなく集団に吸収された。
下り区間で沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)が転倒し、この後ろを走っていた織田聖が巻き込まれ、激しく転倒。ともに注目を集めていたが、コース内で最もスピードが出る区間での転倒はダメージが大きく、リタイアを強いられることになった。

ラスト4周。最後の展開に向け、レースが活性化した。きっかけを作ったのは、唯一のワールドチームメンバーである中根だった。厳しい上りで仕掛け、一旦は捕えられるものの、再び果敢に攻めていく。
この動きでペースが上がった集団は、一気に崩壊し、仕事を終えた選手たちがふるい落とされ、先頭で走る顔ぶれは、それぞれのチームの後押しを得た、この日のエースたちに絞り込まれていった。ここに、優勝候補とも言えるメンバー、18名が揃った。


厳しい振るい落としの中で、選手たちが絞り込まれていく

この中から、ディフェンディングチャンピオン・入部が仕掛けた。集団から飛び出し単独で先行し、タイム差を開いていく。ハイペースでこの動きに乗ろうという選手はおらず、独走のまま走り続けた。だが、先頭の有力メンバーたちから十分なタイム差を稼ぐことまではできない。20秒程度のタイム差のまま、レースが進行していき、いよいよ最終周回へと入った。


集団から飛び出し、単独で先頭を走るディフェンディングチャンピオン入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)

ここで、山本元喜(キナンサイクリングチーム)、かつてブリヂストンアンカー(現TEAM BRIDGESTONE Cycling)に所属し、今はプロ選手からは引退している寺崎武郎(バルバレーシングチーム)、ホビーレーサーの金子宗平が飛び出し、入部を追った。さらに、中根、岡本隼(愛三工業レーシングチーム)らも後に続く。事実上、最終決戦の場となる可能性が高いこの先頭集団に、東京五輪日本代表の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、小石祐馬(チーム右京 相模原)、山本大喜(キナンサイクリングチーム)らも加わっていく。

入部が最後の上りでまた抜け出しを図るが、日本一獲得に全力を懸ける有力選手たちがこの最終局面の動きを許すはずはなく、アタックは決まらない。集団は10名に絞り込まれ、この集団の中でのスプリント勝負になる確率が極めて高くなり、ゴールに向けての牽制が始まっていく。集団にはスプリント力を誇る選手も含まれているが、ここまでの厳しい展開を経て、たどりついたゴール勝負なので、消耗の度合いも大きなファクターになる。


最後の局面に残った9名の決死のスプリント勝負。横一線に広がり、ここから強烈な伸びを見せたのは草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)だった

最終ストレートに差し掛かり、選手たちは横一列に広がった。この中で最も勢いがあったのは、「絶対にこのスプリントを制する」という自信と気概を持って臨んだ草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)。2日前のタイムトライアルで全日本連覇を遂げた増田が追ったが、草場には届かなかった。


全日本を制した草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)。亡き祖父に向け、天を指差し、フィニッシュラインを越えた

草場は天を指差し、先頭でフィニッシュ。初めての全日本選手権制覇を果たした。一週間前に他界したという祖父に捧げる勝利だった。メイン集団を早い段階からコントロールし、このレースを狙う姿勢を強く打ち出してきた愛三工業レーシングチーム。チームの意思を受け、最後の局面にも3名を残し、きっちりと草場が全日本チャンピオンを勝ち取った。


優勝した草場、2位の増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、3位の中根秀登(EF Education-NIPPO)

強いマークを受け、思うように動けなかった増田が2位、ワールドツアー選手として、堂々たるレースをして見せた中根が3位に入り、今季の全日本選手権ロードレースは幕を下ろした。

2年ぶりに開催された全日本選手権は、選手たちの意地とプライドがぶつかりあう熱戦となった。今季開催されるUCI公認レースは全て終了しており、男子エリートも、チャンピオンジャージのお披露目は、来季の初戦となる見込みだ。このシーズン最後の全日本を全力で走った選手たちに、大きな拍手を送りたい。

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【結果】
全日本自転車競技選手権ロードレース(男子エリート 184.5km)
1位/草場啓吾(愛三工業レーシングチーム)4:47:16
2位/増田成幸(宇都宮ブリッツェン)+0
3位/中根英登(EF Education-NIPPO)+2秒
4位/山本大喜(キナンサイクリングチーム)+3秒
5位/岡篤志(NIPPO Provence PTS Conti)
6位/小石祐馬(チーム右京 相模原)+4秒

写真:Satoshi ODA

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