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2022/01/14

P-Navi編集部

シクロクロス全日本選手権2021(男子)

シクロクロス全日本選手権2021(男子)

織田が先頭を行き、そのすぐ後ろに、落ち着き払った表情の小坂がつき、やや遅れて竹之内が続く。身体を軽く左右に振りながら、叩きつけるように力強くペダルを踏み込む織田。そして小坂は先頭に立つシーンでも、気張ることなく無駄のない走りでコースを抜けていく。竹之内は先頭2名を目視できる差を守り、ほぼ同じペースで後につけていた。


積極的な走りを見せ、先頭を行く織田


「バニーホップ」でシケインを跳び越える織田と、降りてバイクを担ぐ小坂

織田はシケインでも降車せずに跳び越えて、ロスなしに、そのまま全力でペダルを踏み込み加速する。少しでも先へ、少しでも速く。勝利への渇望が見えるようだった。
ラスト3周、リスク回避にシケインでは降車し、バイクに飛び乗って加速する小坂との差はじわじわと開いた。タイム差は5秒。織田、小坂、竹之内は、ほぼ同じ間隔で並ぶ。だが、ペースを乱すことなく走るベテラン2名に焦りの色は見えなかった。むしろ、この先の展開を読んでいたのかもしれない。
ラスト2周になると、織田の勢いが鈍り始めた。小坂は落ち着いて差を詰め、織田を捕らえ、先頭に2名のパックが復活した。形勢逆転。これまで攻めの走りを貫いてきた織田への、小坂の攻撃が始まる。得意なセクションで強さを見せるなど、攻めの姿勢に転じたのだ。


小坂が織田に追いつき、反撃が始まった


最終周回には二人のデッドヒートが展開された

最終周回、抜きつ抜かれつの二人のデッドヒートが展開された。だが、二人の表情を見れば、小坂に分があるのは明らかだった。
小坂が仕掛け、先行する。だが、織田はここに食らいつくことができなかった。織田を置き去りにし、単独で先行する小坂。織田との間には、勝利を確信できる差が開いた。

ホームストレートに単独で現れた小坂は、優勝が決まる瞬間をかみしめるように、嬉しそうに片手を何度も突き上げた。地元から応援に駆けつけ、小坂の優勝を見届けるためにゴール脇に陣取っていた宇都宮ブリッツェンのサポーターたちとタッチし、悠々とガッツポーズでフィニッシュ。経験が導いた落ち着いた走りとそれを支える実力で見事勝機を掴み取った小坂。4年ぶり、2度目の優勝を決めた。


ゴール脇に詰めかけたサポーターとタッチを交わしながらフィニッシュに向かう小坂

20秒弱の遅れで織田が、そのすぐ後に竹之内がフィニッシュし、表彰台の3名が決定した。


スタッフと抱き合い喜びを分かち合う小坂。シクロクロスはピットで待機するスタッフのサポートも重要な要素になる


戦友・竹之内と健闘を讃え合う。同じ88年生まれの二人が圧巻のレース力を見せた

織田の失速の原因は、脚攣りだった。思うようにペダルが踏めないまま、追いつかれ、追い上げることもできなくなったという。表彰台では悔しさをにじませていたが、また来年の挑戦を誓っていた。


脚攣りで失速し、負けた織田はゴール後倒れ込み動けなかった。握手を求めに行った小坂。選手たちの絆は固い

この日のレースはハイペースで展開され、10周回で決する形になった。先頭の選手の1周目のタイムを基準とし、遅れた選手たちがレースから除外されていくため、完走を許されたのは30名。ロードレースを主戦場とするスピードに長けた選手たちが、トップ10に食い込んだのも今回の全日本の特徴だった。


戦いを終え、表彰台に乗った3名。それぞれの思いはさまざまだっただろう

4年ぶり2度目の全日本選手権優勝を決めた小坂は、とても誇らしげだった。今季の主要レースで一騎討ちを展開してきた沢田と織田の強さを認め、泥やコーナーなどのセクションでは自分や竹之内などのベテラン勢の方が優っている部分もあった、とレースを振り返った。今回の全日本では、優勝予想は沢田と織田に集中していたが、その中でも冷静にふるまい、きっちりとチャンスをものにした小坂は、自信に満ち溢れているように見えた。27位でこの厳しいレースを完走した父とも喜びを分かち合っていたという。


表彰式を終え、笑顔を見せた織田、小坂、竹之内。ドラマチックなレースだった

翌週開催予定だった宇都宮のUCIレースが、世界の新型コロナウィルスの感染状況から、中止を決定。1月のUCIレースも今年度は開催されないため、主要レースはこれで一区切り。1月末にアメリカ、アーカンソー州で開催されるシクロクロスの世界選手権に向け、代表選手は調整を行うことになるだろう。
地方リーグのレースは、この後も各地で3月まで週末ごとに開催が続く。興味が湧いた方は、お近くの会場に足を運んでみてはいかがだろうか。

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【結果】シクロクロス全日本選手権2021(男子エリート)
1位/小坂光(宇都宮ブリッツェン)1:00:57
2位/織田聖(弱虫ペダルサイクリングチーム)1:01:15
3位/竹之内悠(ToyoFrame)1:01:17
4位/沢田時(TEAM BRIDGESTONE Cycling)1:02:24
5位/加藤健悟(臼杵レーシング)1:02:33

画像:Satoshi ODA

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