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2023/03/24

P-Navi編集部

第2回富士クリテリウムチャンピオンシップ

第2回富士クリテリウムチャンピオンシップ

雨は次第に強くなり、天気予報をくつがえす本降りの雨に変わった。厳しいコンディションの中、レースが動いたのは、折り返しとなる15周目。兒島直樹と、予選でも健闘を見せた今村駿介(ともにチームブリヂストンサイクリング)が飛び出した。スピード維持能力の高いふたりの動きに、多くの選手が反応し、11名の先頭集団がまれた。


ハイスピードを保つ能力に長けたメンバーで構成された11名の逃げ集団が生まれた

ここには、渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム)、スプリント力のある孫崎大樹(キナンレーシングチーム)、昨年の活躍で移籍を果たした谷順成(宇都宮ブリッツェン)、重要な動きには必ず名を連ねている入部正太朗(シマノレーシング)、横塚浩平(VC福岡)、吉岡直哉(さいたま那須サンブレイブ)らが入り、主なチームの面々がほぼ全て揃う形になった。ここには、若手の五十嵐洸太(弱虫ペダルサイクリングチーム)、大学チームからも、小泉響貴(明治大学)、高本亮太(立命館大学)も入っていた。
一通りのメンバーを含む集団が形成され、選手の疲弊もあり、この集団の先行は容認され、差は順調に開き、30秒に。


メイン集団と先行するメンバーとのタイム差はじりじり開いていく。雨がひどくなり、体感気温はぐんぐん下がっていった

20周回目の周回賞はこの動きを作った兒島直樹が獲得した。
前日の予選の春めいた気温を受け、ほとんどの選手が春物のウェアで出走していたが、気温はますます下がり、雨が止む気配はない。濡れた身体は冷え、体感気温はかなり下がっていたことだろう。観客たちも、レインウェアや防寒具を着て、傘を差し、沿道の風景も、時間とともに変わっていった。周回を回るメイン集団には、どこか覇気がなく、先行する11名に向けて追い上げるというより、淡々と周回をこなしているような停滞したムードが漂っていた。


メイン集団は思うようにペースアップできないまま、周回をこなしていく

「このままではいけない」と感じたのか、クリテリウムに多くの戦績を残す小野寺玲らがラスト10周を前に、追走の動きを始める。だが、ペースを緩めることなく周回を刻む先頭集団との差は思うようには詰まらなかった。
ゴールが近づき、昨年の優勝チームである愛三工業レーシングチームが集団の先頭に立ち、ペースアップを試みるが、集団は重く、ペースが上がらない。


ついに愛三工業レーシングチームが先頭に並び、本格的にペースアップを図る


雨の中でも、雨具を着て応援する観客たち

ラスト10kmを切っても、両集団の位置関係に変化は生じず、先頭11名の逃げ切りがほぼ確実になった。先頭集団の中の緊張感が高まる。


先頭11名の逃げ切りがほぼ確実になり、新たな緊張感が生まれる

ラスト2周、最初に動いたのは、また兒島だった。ここから逃げ続けてきた11名の調和が崩れ、ゴールに向けての駆け引きが始まった。続いて仕掛けたのは今村。数的に有利で、さらにトラックレースでリザルトを残すスピードマンを揃えたチームブリヂストンサイクリングの2名が、積極的に仕掛け、集団を揺さぶる。集団はこれまでの協調がうそのように、蛇行し形を変えながら、雨のサーキットをハイペースで走り抜けた。
最終周回に入り、最初のコーナーを回ると、横塚がキレのあるアタックで飛び出した。残りは1kmあまりと距離はなく、明らかに危険な動きだ。だが、選手間に牽制が生まれたのか、ゴール直前に自分で捕らえにいくリスクを嫌ったか、他の選手らが反応せず、横塚は先行し、独走態勢に入った。


先行し、ゴールを目指し全力で独走する横塚浩平(VC福岡)

横塚は持ち前のスピードを生かし、最終コーナーを単独で回る。選手たちが追い始めるが、加速した横塚を止めることはできなかった。横塚はそのままストレートを駆け上がると、他の選手の追随を許さず、雄叫びを上げながら独走でフィニッシュに飛び込んだ。


最終周回を独走で走り、優勝を決めた横塚。6年ぶりの優勝だ

喜びと興奮を爆発させるように、両手を空に突き上げ、ガッツポーズをしながらフィニッシュした横塚。実は、横塚が公式のレースで優勝するのは、2017年以来のこと。昨年はレース中の転倒などからケガが重なり、非常にきびしいシーズンとなったが、今シーズンは非常に幸先のよいスタートを迎えることになった。所属する地域密着型のチーム、VC福岡にとっても非常に嬉しい勝利となったことだろう。
2位には学生ながら大健闘した小泉が、3位には今村が入った。


表彰台で笑顔を見せる横塚(中央)。2位の小泉、3位の今村、そして富士市のかぐや姫たちがステージに華を添えた

ゴール後、横塚は「勝つつもりで臨んではいたが、勝てて正直びっくりしている」と、はにかんだ笑顔で語った。「自分が勝つためには、スプリントではなく、独走に持ち込むしかないため、迷いなく踏み切った」と最終局面、勇気を持って1人で飛び出したシーンを振り返った。最終周回、先頭でフィニッシュを目指すときも、観客からの大きな声援が耳に届き「行けるぞ」と思えたという。観客への真摯な感謝とともに、チームで積極的に動き、レースを作れるようなシーズンにしていきたいと抱負を語り、インタビューを締め括った。

レースを終えた選手たちの中には、極度の冷えで震えが止まらず、低体温症に近い症状を見せる選手もいたという。かじかむ体をうまく使えず、本来のレースができなかった選手もいたようだ。表彰式では、そのような中でも最後まで迫力あるレースを見せた選手たちの健闘を讃える拍手が、いつまでも響いていた。
決勝は想定外の悪天候に見舞われ、サバイバルレースとなってしまったが、選手たちはすばらしい戦いを見せてくれた。濃いピンクの河津桜が咲き、天気がよければ、富士山も望める会場は、春の1日をゆったり楽しむことのできる気持ちの良いロケーションにある。今年も、多くの観客が会場に足を運び、春の週末を楽しみ、ライブ配信の視聴者数も多かったという。大会は今後も継続開催の方向。来年春には、より多くの観客がこの日を楽しみに訪れることだろう。

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【結果】第2回富士クリテリウムチャンピオンシップ決勝
1位/横塚浩平(VC FUKUOKA)1時間17分37秒
2位/小泉響貴(明治大学)+1秒
3位/今村駿介(チームブリヂストンサイクリング)
4位/兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング)+2秒
5位/五十嵐洸太(弱虫ペダルサイクリングチーム)

画像:富士山サイクルロードレース実行委員会、編集部

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