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競輪

2017/06/10

Joe Shimajiri

疾風のサイドストーリー/鈴木奈央(静岡110期)

疾風のサイドストーリー/鈴木奈央(静岡110期)

終始、雨だった宮城県自転車競技場から10日後、鈴木の走る姿を見たのは伊東温泉競輪場である。
その日のレースで、鈴木はガールズケイリンのトップクラスに名を連ねる梶田舞(結果は失格)と最後まで競り合って1着。宮城の競技の時と同じく、レース中の鈴木は勝負の世界で厳しく生きるアスリートにしか見えなかった。

レース後、バンクを出て検車場へ。レースを終えた鈴木が筆者の目の前にいる。
「お疲れ様です。宮城でも雨の中、お疲れ様でした」
筆者が“ダブルお疲れ様”の挨拶をすると
「お疲れ様ですっ!そうですよね、宮城にも来られていましたよね。どこのカメラマンさんなんですか?」
と、人懐っこそうな表情を浮かべながら返してくれたので、しばし会話のキャッチボールが成立する。
「そのうち鈴木選手に取材をお願いしたいと思っているので、その時はどうか宜しくお願いしますね」
最後にそう声をかけると
「本当ですかぁ?取材、待っていますね」
鈴木は無邪気な少女のような笑顔を見せてくれた。それは宮城で表彰式が始まる前の待ち時間に、戦友たちとスマートフォンで記念撮影をしていた時と全く同じだった。

3年後の東京五輪、鈴木はこの世界的スポーツイベントで我々を熱狂させる可能性を大いに秘めている。また、それまでに競輪界でも着々と、ステップアップしていくに違いない。ただ、その過程は平坦な道ばかりではなく、苦しい崖や辛い谷をも歩まなくてはならないだろう。そして、これらを乗り越えても時折、垣間見せる「半分少女」な部分も持ったままでいて欲しい___それも鈴木のアスリートとしての大きな魅力の一つだと、筆者は強く思っているから。

Text & Photo/Perfecta Navi・Joe Shimajiri

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