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2021/12/10

P-Navi編集部

【e-bike×路線バス】雪中の石北峠チャレンジ

【e-bike×路線バス】雪中の石北峠チャレンジ

北海道旭川市と北見市をつなぐルート上に位置する石北峠。標高は1050mと、有名な峠に比べたら高くはないが、展望台からは、大雪山や遠く阿寒の山々、峠を取り巻く樹海を望むことができる。この峠の周りには、本州の標高3000mに相当する植生が広がっており、多くの人が訪れる人気観光スポットだ。
石北峠の秋の紅葉は、特にすばらしく、絶景だと聞いていた。四季折々の景観を楽しめ、勾配もゆるく、ロードバイクなどには走りやすい。そのため、地元のサイクリストには人気のヒルクライムルートである。
だが、最寄りとなる北見駅から峠までは距離があり、勾配がゆるい分、走行距離は長くなることから、一般層にはハードルが高かった。そこで、自転車搭載が可能となった北海道北見バスに、進化型電動アシスト自転車e-bikeを載せ、最寄りのバス停から走る__。このルートなら、一般の人たちでも手軽に自転車で秋の絶景を堪能できるのではないかと考えた。

この日走る国道39号線は、少し前まで旭川と北見をつなぐ主要ルートであり、石北峠はオホーツクの入り口だった。だが、高規格道路が整備され、通行が分散され、交通量も減り、自転車にとっては、かなり走りやすい道になっているという。


夏の石北峠。豊かな自然が広がり、絶景が楽しめる

決行時期は10月中旬。緊急事態宣言の解除を待って企画したため、ベストの時期からは遅くなってしまったが、色づいた葉は、ギリギリ持ち堪えているとの事前情報もあった。
この日の交通手段は、北見バスの温根湯・留辺蘂運動公園線だ。北見バスターミナルで乗車し、終点の「道の駅おんねゆ温泉」に向かう。距離は約33kmで、所要時間は60分。土日は自転車を専用の袋に入れなくても、そのまま積み込めるため、重量があり解体しにくいe-bikeでも、長距離の移動が可能なのだ。
「道の駅おんねゆ温泉」から石北峠までの距離は約35km。往復70kmのライドは、確かに長いが、ラスト10kmまでは勾配が非常にゆるく、帰路は足を止めても進むダウンヒル。軽快に走れる下り基調のルートの組み合わせであり、本当に頑張るのは峠手前の10kmのみ。走ってみると、意外なほど走りやすい。この距離の長さと、ラスト10kmの頑張る区間という課題をe-bikeでクリアできれば、誰にでも走れるのではないだろうか。もちろん、走りきった達成感は満点だろう。

今回走ってくれる小島智香さんは151.5cmと小柄であり、ミニベロ型のe-bike、BESVのPSA-1をお借りしてトライすることになった。


バスの車椅子エリアに自転車を載せ、指定のベルトで固定する


峠にはどんな景観が広がっているのだろう? 車窓から紅葉を眺めながら思いを馳せる

日没の早い秋は、道の駅を13時50分に発つ便が帰路の唯一の選択肢になるため、行きは早めのバスを選んだ。朝7時23分にバスに乗り、のどかな眺めを楽しむこと1時間。8時26分に「道の駅おんねゆ温泉」に到着した。朝まで降っていた雨の影響で路面は濡れていたが、天気予報は晴れ。徐々に路面は乾いて来るだろう。


運転手さんに見送られ、バスを降りる。親切な方だった


石北峠へのヒルクライム、スタート!

のびやかに広がる田園風景の間をひた走る。勾配は少し上っているのだが、e-bikeでは、ほぼ感じないレベル。この日は強い向かい風が吹き付けており、アシストのパワーを拝借することになった。のんびりした眺めを楽しみながら、ヒルクライムに思いを馳せる。この地域は紅葉といっても、黄色に色付く木々が多い。植生が異なるという石北峠は、どんな色に染まっているのだろう?


牧草地帯であるため、晩秋でも緑の景観が広がる

5kmほど走り「塩別つるつる温泉」で小休止。美肌の湯を楽しめる人気の宿だ。
この日、帰路のバス乗車前にゆったりランチを食べるのは難しい見通しだったが、早朝出発になるため、出発前に調達できるはコンビニのみ。ここまで来てコンビニ弁当では味気ない。


塩別つるつる温泉の駐輪スペースに自転車を置く。屋根付きが嬉しい

そこで、この宿の朝食ブッフェで残った料理などを詰め、ランチボックスにしてもらえないかと打診したところ、主旨を理解し、快諾してくれたのだ。本来廃棄されてしまう食べ物であり、フードロス問題の解消にもなるだろう。こちらとしては、人気宿の料理を楽しめ、施設サイドも収入になる。なんていいアイデアだろう! 価格は450円(しかも税込)と聞いていたが、受け取った包みはずっしりと重かった。ご協力と大盤振る舞いにお礼を言い、重すぎる包みはサポートカーに積んで、自転車にまたがった。


つるつる温泉キャンプ場脇を走る。紅葉が美しい

塩別つるつる温泉の人気のキャンプ場は紅葉に染まっていた。見上げると青空が顔をのぞかせており、周囲は明るい。遠方の山々も光に輝いており、ルート上の景観に期待が高まる。


走り出すと路面は乾いていた。青空も顔をのぞかせ、美景を堪能できる予感!

国道39号線に戻ると、変わらず激しい向かい風が吹きつけていた。ついペースが鈍るが、峠まではまだ30kmある。少しペースを上げることにした。e-bikeであっても、少しがんばらなくてはならない強度。「e-bikeで本当によかった!」と、智香さんが笑う。じんわりと汗ばむ運動になり、体脂肪も燃えているかも!
林や草原など、ルートは美しい自然の中を抜けていく。ふと、顔にポツポツと冷たいものが当たるのを感じた。雨だ! 空は明るく、お天気雨のようで、幸い、すぐに止んだ。「このあと、また雨になっちゃったりしてね」と、天気予報を信じていた二人は、冗談を交わす。いや、この時は冗談だと思っていた。

北見富士が見えてきた。フォルムが美しく、市民に愛される市内最高峰の山は紅葉に彩られていた。ここに紅葉があるなら、きっと石北峠にも美しい紅葉が広がっているに違いない。「峠の紅葉がキレイだといいですね」と、走りながら、思いをめぐらせる。


雪が降ってきた。「キレイ!」と笑顔で喜ぶ

ふと、何かが舞っていることに気づく。雪!?が降ってきた。だが、空は明るい。お天気雨ならぬ、お天気雪か。雪はすぐに止んだ。北海道の山では、この時期でも時々、雪が舞うのかなどとぼんやり考えていた。


光に輝く木々の前を通り抜ける

白樺エリアに入った。日の光を浴びて輝く白樺林がとても美しい。路面はかなり濡れていた。雨が降ったり、止んだりしているのだろう。「路面に気をつけた方がよさそうですね」と智香さん。落葉も多く、濡れた路面は滑りやすい。気を引き締めて、行かなくては。


道のモデルルートに指定されており、自転車の通行を示す矢羽根やピクトグラムが描かれている

このルートはサイクリングのモデルルートに指定されており、ドライバーに自転車の通行を啓発する矢羽根と自転車のピクトグラムが描かれている。交通量も多くなく、通り過ぎるクルマは、しっかりと空間を空けて抜いてくれるため、不安を感じることはない。

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