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2022/01/25

P-Navi編集部

春を待つSakura RollingHillsライド

春を待つSakura RollingHillsライド


ごちそうさまでした! 雨も上がり、笑顔で再スタート!

居心地がよく、すっかり長居してしまったが、ライドの後半に戻ろう。この「小澤ファーム」はルートのちょうど中間地点にあたり、この後一番大きな峠が控えている。再度自転車に乗り、雨に濡れて輝く秋の景観の中へとこぎ出した。


豊国酒造。この日は天候不安から外観の見学のみに留めることになった

ほどなく、大きな杉玉が下がった、蔵のような建物の前に出た。「これが豊国酒造です」と山本さん。1840年代に創業したと言われるこの酒造会社は、阿武隈の豊かな水を使い、会津杜氏伝承の技を基本とした酒造りを続けてきているという。この日は当初特別に酒蔵を見学できる予定だったのだが、悪天候になるリスクが大きかったため、急遽見送ることになっていた。残念だが、まだ20km以上行程が残っている。先ほどの雨からしても、まだまだ安心はできず、訪問は次の機会に見送ろう。

古殿町内を走る。交通量も少なくて走りやすい。3kmほど走ると、山本さんは脇道に入り、自転車を止め「古殿八幡神社です。ここがあの流鏑馬をやる道です」と弓を射るジェスチャーをして見せた。流鏑馬とは、古式の盛装をした騎士が、馬で駆けながら3つの的を矢で射る伝統の神事。平安中期から続いているらしい。筆者も何回かメディアで見たことがあったが、こんな狭く短いルート内で射っていたとは! まさに神業だ。


黄金色のイチョウの葉で染まる古殿八幡神社

自転車を押し歩き、神社のそばに停めた。神社にはイチョウの大木があり、境内は輝くように鮮やかな黄色い落葉で埋め尽くされていた。このイチョウの樹齢は400年とのこと。長い間ここで流鏑馬や時代の移り変わりを見守ってきたのだろう。

再スタート。ここからヒルクライムが始まる。峠を越え、ゴールを目指そう。
じわじわと登り始めた。日没が早いためか、天候のせいか、少し暗くなってきているようにも感じた。ルートは、趣のある森や田園風景の中を抜けて行った。自分の呼気だけが聞こえてくるような静かな空間が続く。勾配がきつい箇所もあったが、長くは続かず、平坦に近い場所や、下り区間も現れる。紅葉も随所に残っており、黄色や赤色の葉や、たわわに実った柿のオレンジが心を和ませてくれる。進むごとにさまざまな表情を見せる秋の風景を楽しみながら走行を続ける。


印象深い景観が広がる田園風景を抜けていく


どこか懐かしい景観が続く

上りを越えたところで、山本さんが止まった。「これが幸右衛門櫻です」と、大きな一本桜を指さした。墓地の際に立つこの大きな桜には言われがある。江戸時代に幸右衛門という方がここで狼に襲われたが、この木の上に登って、自分のふんどしに火を点け、それを振り回して狼を追い払い、そのままこの木の上で一夜を過ごして命を守ったのだという。想像していなかった種類のストーリーにキョトンとし、思わず笑ってしまった。


狼から逃れるために登り、一夜を明かしたと言われる幸右衛門櫻

どうやって火を点けたのか? 燃え尽きるまでに狼は退散したのか? 疑問でいっぱいになる。そもそも美しい桜にはそぐわないように思える種類の話だが、桜自体は、とても華やかで美しいらしい。逆に興味をそそられた。

ここまで来れば、もうゴールは近い。登坂もそろそろ終わりになるようだ。ゴールには、あたたかい温泉が待っている!
残された2kmは下り基調。気持ちのいい田園風景や、まっすぐに伸びる針葉樹林の中を抜けていく。緑が鮮やかな夏は、いっそう美しいだろう。濡れた路面に気をつけながら、爽快に走った。


母畑温泉に帰着。八幡屋が見えた!

並ぶ家の数が次第に増え、母畑温泉に到着した。北須川を渡り、温泉街を抜け、八幡屋に帰着。スタッフの皆さんが出迎えてくれた。雨にも降らることなく、無事にゴールすることができた!


ゴール! 曇天ではあったが、満喫することができた。また、桜の時期に走りたい

走行距離は43kmほど。ライドとしては長くはないが、走りごたえのあるコースだった。記念撮影をして解散した後、希望者は、湯質にも、湯のしつらえにも人気の高い八幡屋の温泉へ、日帰り入浴に向かった。

青空は見ることができなかったが、それでも里山の風情を楽しむことができた。桜の名所がふんだんに盛り込まれたコースではあったが、夏には青々とした水田や緑に覆われた草原、山々の美しさを堪能でき、秋には紅葉を愛でることができるなど、それぞれの季節の美しさを満喫できるだろう。阿武隈地域にはそれほど標高の高くない丘陵が続き、森林と高原がなだらかな地形をかたちづくっており、コースの選択肢も多いようだ。
この日に出会った桜の木々たちが、ピンク色の霞をまとい、地域を彩る姿を見てみたい。「いつか、春にここへ走りに来よう」。そう胸に固く誓って、帰路についたのだった__。

画像:福島県企画調整部地域振興/編集部
(※昨年11月に感染防止対策を行った上での実施)

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