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2021/06/16

Norikazu Iwai

町田太我の走りに感じたスター性

町田太我の走りに感じたスター性

13日に終了した「国際自転車トラック支援競輪G3・松山」は、117期の町田太我の独断場だった。見た感じは飄々(ひょうひょう)としているが、レース内容は最高に頼もしい。気っ風のいい先行は、辛口の筆者でもスターの要素ありと見た。117期で最初のG3ウィナー。このまま順調に育てば、G3だけでなく、G1、G2でも脅威になること間違いなしだ。

その松山を振り返っていこう。一次予選は4番手という絶好のポジションをキープしながら、打鐘で猛スパートして逃げ切った。良い位置を取っても、安心することなく鐘から仕掛けるあたりに大物感が漂う。二次予選は7番手。しかし、そこから長い距離を踏み込み1着。他の選手に比べて、外、外を走っていた印象を受けた。それだけでも脚にくるのに、町田には関係のないようだった。準決勝は3着に敗れてしまったが、7番手から仕掛けた時、後続の選手が千切れるというマイナス要素があった。2番手に坂本貴史が入り、3番手には齋藤登志信。さすがに坂本が真後ろでは、町田も苦しかったに違いない。それでも最後まで粘り、3着で決勝への切符を手にした。ここまで3走。先行にこだわる姿勢は、見る者の心を奪った。


松山G3決勝のゴール。3・町田が逃げ切りG3初優勝を決めた

迎えた決勝。相手は同期のライバル・菊池岳仁。菊池は早期卒業した逸材でもある。町田のラインは吉永好宏と2車。レースでは、8番手から強引に叩いて主導権を握る積極的な競走に出た。だが、吉永がそのスピードについていけず、何と菊池が2番手に。それでも町田は落ち着いていた。自分のペースで踏み直し、逃げ切ったのだ。
菊池もプライドを見せた。優勝するなら直線勝負でも良かったが、最終バックで捲りにいっている。町田に合わされ万事休すとなったが、先行選手として追い込みに賭けるより、自力勝負した方が良いという判断だったのだろう。勝った町田は別にして、菊池も褒め称えたい。

117期といえば、寺崎浩平と菊池がまず頭に浮かぶ。日本競輪選手養成所を早期に卒業し、同期より早くデビューを果たしている。菊池は今期からS級に昇格。さらに今、注目の山口拳矢など9人がS級特昇を決めているほど、逸材揃いなのだ。S級初優勝は昨年4月の寺崎が最初だったが、現在は山口を含む他の同期も力を付けてきている。近年まれに見る豊作だと感じる。

町田の在所成績は11位だったが、ゴールデンキャップを獲得しており、教官達からの評価は高かった。昨年11月にS級に特別昇級を果たすと、走るごとに強さを増していき、今回の結果につながったのだ。
同県の広島には現在、競輪界No.1と言われる松浦悠士がいる。先行選手として大成する条件として、身近に尊敬できる選手がいるかどうかが挙げられる。その点、町田はこれ以上ない環境だと言える。隣県には清水裕友もいるし、そういった中で勉強しながら成長できるのは他の選手から見れば羨ましい限りだ。
G3初優勝は、結果だけでなく内容を伴ったものでもあった。先行にこだわる姿は、デビュー当時の深谷知広を思いだした。捲りに頼らず先行勝負。今後さらに上のステージで戦うためには課題も多かろう。しかしながら、町田の走りをみているとそれすら感じられないのである。壁にぶち当たったとしても、すぐに乗り越えられると思ってしまう。それだけ町田という選手には魅力を感じられずにはいられない。

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