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2022/01/16

Yusaku Kosho

古性優作の「KOSHOW TIME!」Vol.7

古性優作の「KOSHOW TIME!」Vol.7

みなさん、こんにちは。競輪選手の大阪100期、古性優作です。
まずは、ご報告から。
「KEIRINグランプリ2021」を優勝することができました!
いつも応援していただいているおかげだと思っています。本当にありがとうございました!

今回のコラムでは、まずグランプリを振り返りたいと思います。

◆グランプリを迎えるまでの期間◆
実は、12月頭では思った以上に状態が上がってこなくて、焦りそうになっていました。ですが、もうなるようにしかなりません。そこからは気持ちを切り替えて、調整をしていきました。100%だったかと聞かれたら、そこまでの感触ではなかったのですが、焦りはなく、リラックスしてグランプリまでの期間は過ごせたのかなと思います。
もちろん、体も繊細になっていましたし、緊張はしているのですが、過度な緊張が無い状態です。「繊細」というのは、ペダリングだけでも、いつもと違い、神経がもう一個、敏感になっている感覚のことです。普段のレースでは、アップがあって、脚見せがあって、競輪競走があるのですが、今回は普段の練習から、その感覚に近いくらい敏感になっていました。今まではG1の前になると、そういう感覚になっていましたが、グランプリの時は、かなり早い段階でその感覚になったなと思います。

◆レースのシミュレーション◆
普段のレースでは、番組が出た時も、そこまで対戦相手は見ないんです。直前に出走表を見て、そこから作戦をパパッと決めていたので、グランプリのようにメンバーが最初から出ていて、そこからさらに1カ月も期間があるというのは経験したことがありませんでした。そこは、すごく特別だったかなと思います。今回は競輪祭が終わり、グランプリメンバーはもう決まっていたので、最初の2日間はいろいろなシミュレーションを考えたりもしました。でも、それを続けていたら、睡眠の質が良くなくなったので、もう疲れたからやめました(笑)。そこからは、レース当日、レースが始まるまで、全くシミュレーションのようなことは考えませんでした。

◆グランプリ発走機での思い◆
グランプリにはリラックスして入れました。もちろん近畿勢から一人しか出られなかったので、プレシャーは感じていましたけれど、そこにもしっかりと向き合って、集中して発走機につけたかなと思います。そして、無事に開催されたことにホッとした気持ちがありました。コロナウイルスの影響もありましたし、この舞台に立つこと自体が難しいかもしれない時代。感染者が増えないこと、もちろん自分も感染しないように行動したりと、違う面で繊細な部分もありました。決して、当たり前に開催できるものでもなかったとは思います。とてもありがたく感じていました。

◆打鐘で頭に浮かんだ映像◆
レースは、スタートからみんなが出て行って、関東勢が後ろ攻め。自分は後ろからでいいかなと思いました。そして関東勢が動いて、自分が4番手になった時、2012年に村上義弘さんが優勝したグランプリの映像が頭の中にパッと浮かんだんです。そして打鐘くらいで、これは自分が行く展開になるなと思いました。ただ、吉田拓矢君は普通に駆けても、めちゃくちゃ強い選手です。今回は関東ラインのために発進したような状態だったので、打鐘から、後ろに付いているだけでかなりキツかったです。後ろには、郡司君がいるとは思っていましたが、あとは「ここだ」と思ったところで、思い切り踏んだ感じです。しかし、優勝するための100%の仕掛けをしたとは思っていません。たぶん、優勝を目指すということだけにフォーカスを置いてしまうのなら、直線勝負をした方が勝率は凄く上がるとは思います。ただ、近畿の選手として、村上さんのレースを何度も見てきましたし、勝ち方にもこだわりたかった。その思いが自分の中にも強くありました。普通に考えて、吉田君が先行して、宿口さんが発進する展開は、グランプリで無ければ、自分は出切れていなかったと思います。そういう展開の要因も重なったのかなと思っています。

◆溺れる感覚◆
抜け出してからゴールまで、本当に長かったです。オールスターを優勝した時は、直線で脚が三角に回る感覚がありましたが、今回は三角には回っていないのに、まるで「溺れている」ような感覚でした。バタバタバタバタして、まったく自転車が進まなくて、「まだゴールが来ない!」と。この感覚は、今までで初めてでした。道中で後ろに郡司君がいたのは確認していたので、郡司君か平原さんが後ろからは来ているのかなと思っていましたが、それも全くわかりませんでした。
ゴールした瞬間は、自分だけのものではない力が働いた感じがしました。仕掛けた時も思いましたが、今まで近畿の選手としてやってきたこと、その全てがグランプリという舞台で、点と点が線になった。あのレースに関しては、その感覚がありました。

◆グランプリ覇者として◆
もう2022年も始まりました。自分の中では、グランプリから良い意味で切り替えはできています。グランプリは獲りましたが、あのレースに関して、自分が一番強かったかというと、そうは思っていないんです。ダイジェストも見たのですが、ラインの前を回っていた吉田君、郡司君、清水君といった自力選手の強さを改めて感じました。自分は、ただタイミングがあっただけ。だから、満足はできていません。
優勝賞金は1億円ですが、ちょっとだけ財布に入れて、あとは振り込みにして、そこからまだ口座も見ていません。家族には何かプレゼントしたいなとは思っていますが、自分には今、欲しいものが無いので……。強くなるための投資はしたいですが、自分へのご褒美は今回無しです。

◆和歌山記念での出走を終えて◆
今回は松浦君、郡司君、そして佐藤慎太郎さんとS級S班の選手がいましたが、僕よりも明らかに連日のパフォーマンスが良かったです。一緒に走っていても、レベルが全く違う感覚がありました。それでもずっと12レースを走らせてもらいましたが、1番車、S級S班というよりも、確定板にも1回しか載れなかったですし、情けなかったと思います。凄く重いプレッシャーがのしかかっているというわけではなかったのですが、ただただ責任をまっとうできず、選手として情けないというだけでした。僕は脇本雄太さんみたいな圧倒的な力も無いですし、ズバ抜けて何かが良いわけでもありません。だからこそ、自分は泥臭く、また上がっていくしかないと思っています。

◆2022年の目標◆
S級S班の選手はとにかく安定して強い。自分もしっかり結果を残せるように、今年はハイアベレージで、高いところで凄く安定させたいと思っています。そして、間違いなくG1タイトルもまた獲りたい! そこが目標です。またG1を勝って、グランプリに出られるように頑張りたいと思いますので、今年も応援していただけると嬉しいです!

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【過去のコラムはこちら】
古性優作選手コラム「KOSHOW TIME!」
Vol.6「初のグランプリへ!」
Vol.5「強くあり続けるために」
Vol.4「オールスター優勝報告」
Vol.3「オールスターに向けて」
Vol.2「福井G3優勝しました!」
Vol.1「地元G1で一番の景色を」

【略歴】

古性優作(こしょう・ゆうさく)

1991年2月22日生 大阪府出身

2006年から2008年までの3年連続で全日本BMX選手権大会を優勝。
2011年7月に第100期生として岸和田競輪場でデビュー。2014年11月松戸競輪場でS級初優勝すると、2016年12月には地元の岸和田記念でG3初優勝。さらに2021年7月の福井記念で通算6回目のG3優勝。そして8月のオールスター競輪で念願のG1初優勝。KEIRINグランプリ2021では初出場・初制覇の快挙を達成した。あらゆる展開に対応する変幻自在の走りが魅力。

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