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2022/02/18

木三原さくら

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 103 Hunting

冬季五輪が開催中。自宅のテレビを手放して、はや数カ月、オリンピックの情報はもっぱらSNSのトレンドや、ネット放送のコメント欄から入手しています。気になって追えば、公式的に映像を見ることもできますし、文明の利器を手放しても便利な世の中になりました。
メダル獲得のハッピーなニュースもあれば、悔しいニュースもあります。たった一度、一瞬、一秒ですべてが変わってしまう。やるせないできごとに、胸が締めつけられることも。その度に、五輪の代表選手がどれだけのものを背負って挑んでいるのかということを教えられます。

奈良競輪開設71周年記念「春日賞争覇戦」で、福井の脇本雄太選手が競輪に復帰しました。昨年の東京五輪出場後、間をあけずにG1オールスター競輪に出場して決勝戦で2着。さらに京都向日町記念で完全優勝。しかし、その後の開催を途中欠場して、ケガによる長期欠場……。約4カ月ぶりのレースを、競輪ファンのみなさんは心待ちにしていたと思います。
初日のレースは、地元の三谷竜生選手と小笹隼人選手を連れた3車ライン。直近の競走得点はもちろん「0点」。復帰戦ということで状態は未知でしたが、対戦相手を比較するすると、脇本選手の方が何枚も格は上だと感じるメンバー構成でした。結果は捲って1着。上がりタイム(9秒2)を見たファンの人たちから、驚きのコメントが続々と放送に流れてきました。
私は奈良競輪本場のホームスタンドにいたのですが、脇本選手のレース後の拍手の大きさに驚きました。それまで聞こえていたヤジも声援もすべて飲み込む拍手喝采。

「おかえりワッキー」

言葉がかき消されるほどの拍手なのに、そんな言葉が聞こえてきた気がしました。心配していた気持ちを吹き飛ばす強さで、ワッキーが競輪に帰ってきた! そんな競輪ファンの心の声だったのかもしれません。そして、レース後の勝利者インタビューで見せてくれた笑顔。マスク越しでも伝わる、嬉しそうな表情が印象的でした。東京五輪直後のオールスター競輪では、そういった笑顔は見られなかったように記憶しています。たくさんの期待が五輪前から、そして五輪後、さらにこの長期欠場明けでもかけられてきた中で、しっかり結果を出し、温かなファンの拍手に脇本選手の緊張もほぐれた__そんな優しい笑顔でした。
2日目以降は、また凛々しい表情に戻った脇本選手。勝ってなお戦う男の目でした。決勝戦は中四国の5車連携にやぶれましたが、脇本選手の強さを再確認した4日間でした。

「おかえりワッキー。戻ってきてくれてありがとう」

そう、改めて声を大にして言いたいです。ずっとずっと、たくさんの期待を背負って走ってきて、また私たちは好き勝手に期待しちゃうけれども、競輪場で脇本選手の走りを見ることができて、本当に嬉しかったです。
今年はG1の表彰台で、最高の笑顔を見せてほしい! 最強の先行選手が帰ってきた競輪界、さらに面白くなること間違いなしです!

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【「恋して競輪ハンター」過去コラムはこちら】
102Hunting「面倒な客」
101Hunting「研究と進化を続ける競輪選手」
100Hunting「グランプリを振り返って」
99Hunting「残そうと 思う気持ちが 交わされる」
98Hunting「心を射抜かれた諦めない競走」
97Hunting「阿部様の引退」
96Hunting「関東ラインの強さについて」
95Hunting「番手捲りに思うこと」
94Hunting「山口拳矢選手は競輪界の原始星」
93Hunting「車券購入は自己責任」
92Hunting「東口高配当流星群」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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