TOP > コラム > 競輪選手の原大智

コラム

一覧へ戻る

コラム

2022/04/28

岩井範一

競輪選手の原大智

競輪選手の原大智

日本勢が大活躍した北京冬季五輪が終わって約2カ月。各地でメダル報告会が行われ、栄誉賞を授与されている。2大会連続のメダルこそ逃したが、原大智もフリースタイルスキー・モーグルで大健闘した。2018年の平昌冬季五輪で、日本人として同種目で初のメダル(銅)を獲得した原。今でも凱旋した時の、清々しい笑顔を覚えている。しかし翌年、原は日本競輪選手養成所へ入所した。スポーツマスコミはまさかの転身に驚いたし、モーグルの関係者も寝耳に水だっただろう。
多くのマスコミが詰めかけた入所式。原は丸刈りで姿を現した。実は、原の期から、養成所の規則が変更になり、丸刈りでなくてもOKになっていた。しかし、原は決意表明とも言える丸刈りだった。驚くことに、この時点で2022年の北京五輪をモーグルで目指すと宣言した。「この世界は甘くない」と、否定的な意見も相当あったが、原は自分を貫き通した。養成所では苦しいことばかりだったと報道された。規定のタイムが出ず、退学のピンチもあったと聞いた。それでもポテンシャルの高さは、さすが五輪のメダリスト。無事に卒業を果たし、2020年8月にデビューを飾った。
デビュー後は苦戦の連続。原の一挙手一投足をマスコミが追う。そのプレッシャーの中でも、競輪とモーグルの二刀流を貫き通した。そして迎えた北京五輪。順当に勝ち上がり、決勝の2回目まで進んだが、3回目の6人には1人及ばず敗退した。五輪が最後の大会と決めていたが、関係者が引退試合をセッティングし、3月21日に北海道で開かれた「全日本フリースタイルスキー選手権大会」に出場し6位。モーグル競技に、ピリオドを打った。

競輪の復帰戦は、3月いわき平。果たして、どんなレースを見せてくれるのか楽しみだったが、競輪は甘くない。6着・2着・6着でシリーズを終えた。続く大垣も、6着・2着・4着。さらに3場所目の函館は、5着・2着・7着。2日目はオール2着なのだが、これは俗にいう「敗者戦」。正直なところ、まだ上のレベルで戦えるような脚ではなかった。ただ、筆者の勝手な思い込みだが、原の表情は明らかに変わっているように見えた。着はいまいちではあったが、「競輪選手の顔」ともいうべきか、逞しさを感じた。
昨年9月からモーグルに専念していたため、練習不足は否めない。だが、そこはメダリスト。競技は違えど、一歩一歩、前進している。デビュー当時は線も細く、どこかおどおどしているようにも見えたが、今はそれがない。逆に、走るのが楽しくて仕方ないようにも見えた。結果はまだ出ていないが、競輪に専念するスタートを切った原を応援していきたい。

Text/Norikazu Iwai

Photo/Perfecta Navi編集部

***************
【岩井範一の過去コラムはこちら】
新しい玉野競輪場
高木真備の電撃引退
売り上げを伸ばしたウィナーズカップ
無観客の卒業記念レース
全日本選抜を振り返って
二刀流に挑んだ原大智
売り上げ増がつづく公営競技
小田原競輪、存続へ
PIST6で感じたプラス作用と今後の課題
新しく始まる250競輪

ページの先頭へ

メニューを開く