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2022/10/08

木三原さくら

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

木三原さくら「恋して競輪ハンター」118 Hunting

このコラムの連載当初から、また、それ以外の様々な場所でも、好きな競輪選手のタイプを「先行選手」と答えてきました。先行選手と一言で言っても、様々なタイプがいますよね。つっぱり、抑え、カマシ……。広く自力選手を指して使う人も、いらっしゃる印象です。
私の好きな先行選手は、徹底先行。つっぱりでも、抑えでも、カマシでも、とにかく「逃げる」ことが得意で、それを武器に戦っている選手です。逃げの決まり手と、捲りの決まり手の差が極端にあったり、バック回数はもちろん、ホーム回数の多さ、なんなら専門紙で見れる「J(打鐘で先頭に立っていた回数)」まで多ければ、たまりません。
平塚競輪で行われたF1ナイター開催。S級準決勝の一つ目に、積極先行型が3人集まったレースがありました。和歌山の中西大選手、千葉の野口裕史選手、そして長野の宮下一歩選手と、誰が先行してもおかしくないレースで、また踏み合いの可能性も十分あるレースに見えました。こういうレースは車券予想で展開とピタリと当てるのは難解ではありますが、それでいて楽しみなレースでもあります。

レースは残り2周からガップリ。まず宮下選手と野口選手が一気に前に出て踏み合い、少し緩んだように見えた打鐘で中西選手も一気にカマシて来ました。打鐘の4コーナーから残り1周、3人の先行選手が横に並んで、モガく姿は超スペクタクル! そして、そんな先行選手同士が力を出し合う素晴らしいレースを、さらに素晴らしくしたのがマーク選手たち。特に3車並走の踏み合いの真ん中にいた神奈川の松谷秀幸選手は、窮屈な位置でありながら、野口選手のマークをけっして外しませんでした。朝の通勤ラッシュの駅のような、お正月のセールのデパートのような大混雑を、そのどこよりもハイスピードで前に進みながら、ラインを崩さない走り。絡まれることもありながら守り切り、最後に抜くことはできませんでしたが、ラインでワンツーを決めた結果には、胸が熱くなりました。そして、その準決勝は次なるドラマへと繋がっていくのです。

最終日の決勝では、単騎となった野口選手。それでも、先行していきました。その後ろで、新田祐大選手と北井佑季選手が並走となり、レースは大波乱。結果として、北井選手のS級初優勝となりましたが、まず間違いなくあのレースを作ったのは野口選手の先行だと私は思っています。
野口選手のレース後のコメントには、単騎でも仕掛けた理由が載っていました。
『単騎でどうしようかなと思っていたけど、走る前に中西大君から「頑張って行ってくださいよ!」って激励を受けて、準決勝で踏み合った相手に、そう言われたからには、僕がいつも通りのレースしなかったら(準決勝で対戦した)彼や宮下一歩君に悪いなと思って』(※平塚競輪ホームページ内「選手コメント(最終日)」より抜粋)

このコメントと準決勝、そして決勝のダイジェストで、だいぶお酒が進みそうです(笑)。真っ向勝負の戦いをした相手への敬意、そして思いを背負っての先行。熱い男たちのドラマを観たと改めて興奮と感動が押し寄せました。

誰かが仕掛けなければレースは動かない。いつだって、戦いの口火を切ろうと逃げる先行選手が、やっぱり好きです。誰よりも先に、誰よりも長く、ラインを信じて駆けるその姿には、競輪の魅力が詰まっていると感じました。

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【恋して競輪ハンター・過去コラム】
117Hunting「競輪人生10年目!」
116Hunting「ベテラン郡英治選手の走り」
115Hunting「2時間悩んだオールスター決勝」
114Hunting「あとの祭~サマナイを振り返って」
113Hunting「吉田輪太郎のラストラン」
112Hunting「競輪イチ諦めの悪い車券」
111Hunting「日野未来の松戸優勝」
110Hunting「後悔のない車券購入を」
109Hunting「広島でコイコイマスター」
108Hunting「策士・小川真太郎」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー。
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に競輪を自腹購入しながら学んでいく。
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり。
好きな選手のタイプは徹底先行!
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション。
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている。

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