
北井佑季
神奈川 119期
高松宮記念杯競輪 優勝
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前へ、ただひたすら前へ。
2018年にプロサッカー選手としての人生に別れを告げ、そこから最初で最後と決めていた競輪界への挑戦が始まった。高木隆弘を師事し、厳しいトレーニングに邁進。第119回生として合格した日本競輪養成所では滝澤正光所長の下で鍛え抜かれた。
今でこそ北井の代名詞にもなっている「徹底先行」であるが、意外にも養成所の競走訓練で逃げ切りを果たしたのは1回のみ。ゴールデンキャップを獲得したが、在所成績は55位。もちろん、ラインもなく、全員が自力を磨く中での逃げ切りは、並大抵のことではない。挑んでは破れ、また研さんを積む日々__。他競技から転向し、競技歴の差は決して埋めることができない。だが、アスリートとして挑戦し続けたい思いは、さらに強く燃え上がっていく。先行勝負で前にひたすら踏むことは、北井の選んだ戦法ではなく、人生そのものだったのかもしれない。 -
デビューは2021年5月。極限まで自分を追い込むと言われるトレーニングを積んで、400バンクを2周先行で押し切る無尽蔵のスタミナを手にすると、上位陣を相手に真っ向から先行で挑む姿に、競輪ファンの期待値も日に日に増していく。
グレードレースでも結果を残し、2023年8月に向日町で記念初優勝。そして、2024年2月に全日本選抜競輪でG1初優出を果たすと、決勝では郡司浩平の優勝に貢献し、自身も3着に粘った。どこか漠然としていたG1タイトルという目標が、クリアになった瞬間だった。
そして、全てが結実する瞬間は訪れる。「獲れると思って挑んだ」という6月の高松宮記念杯競輪。先行する郡司浩平の番手から抜け出してG1初優勝を達成した。ここまでの決断、努力、そして仲間や家族への思い。表彰式での涙がすべてを物語っていた。
だが、もちろんここがゴールではない。北井には抱いている夢がある。それは、滝澤正光や村上義弘が呼ばれた「先行日本一」の金看板だ。その目標を果たすには、もってこいの場所が迫っている。
「グランプリを逃げ切りで制覇する」。
初出場の大舞台でも、ただひたすら前に踏む__。