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2022/07/22

P-Navi編集部

JCL第4戦・広島トヨタ広島クリテリウム

JCL第4戦・広島トヨタ広島クリテリウム

国内のプロサイクルロードレースリーグのジャパンサイクルリーグ(以下、JCL)の第4戦「広島トヨタ広島クリテリウム」が7月10日、広島県広島市の西区商工センターで開催された。

前日に開催された123kmの広島ロードレースは、アップダウンが繰り返される厳しいサーキットを舞台とし、まさにサバイバルレースとなったが、この日のレースは、穏やかな瀬戸内海を望む広島市西区商工センターに設営された平坦の特設コースが舞台となる。
レースは、カタカナの「ト」型に設置された1周1.7kmのサーキットを30周する51kmの設定。走行距離は前日の半分以下であるが、1.7kmの間に、3箇所の180度コーナーが含まれており、選手たちはコーナーを越えるたびに減速と再加速を強いられ、消耗されていく。距離が短くとも、侮ることはできないだろう。集団の後方になるほど、この減速と再加速の振り幅は大きくなるため、位置取りも非常に重要なテクニックになる。数百mごとに、このターンが含まれるがゆえに、力のない選手はふるい落とされていくシビアな展開になることが予想された。

ヴィクトワール広島
先頭に並ぶホストチームのヴィクトワール広島

スタートラインには、ホストチームであるヴィクトワール広島がサポーターの応援に応えながら最前列に並んだ。
各賞ジャージは、前日のレースで入れ替わりが生じた個人総合首位のイエロージャージを増田成幸(宇都宮ブリッツェン)が着用。スプリント賞首位のブルージャージは小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)、山岳賞首位のレッドジャージは山本元喜(キナンレーシングチ
ーム)が守っており、U23首位のホワイトジャージは湯浅 博貴(ヴィクトワール広島)が着用する。集まった観衆の拍手に見送られて、選手がスタートしていく。


大観衆に見守られてレースが始まった

序盤から抜け出しを図り、アタックがかけられる。しかし、前日のアップダウンコースでは活躍の場を見つけられなかったスプリンターを抱えるチームが、自分たちに有利な展開に持ち込むために、この段階からリスクのあるアタックを許さず、ひとつひとつ捉えるために、なかなか抜け出しが決まらない。


動きが決まらず、ペースアップする直線で、集団は一列に長く伸びた

動きが生じたのは、アタックの応酬に疲れと緩みが出始めた12周目だった。集団からパラパラと選手たちが飛び出して行ったのだ。


コース内に3カ所設定された180度ターンが選手たちの体力を奪っていく

抜け出しを決めたのは8名。この中には、実力者が多く含まれ、逃げ切りの可能性も高い顔ぶれだった。
メンバーは、昨年のリーグ個人総合優勝者である山本大喜、前日の勝利をお膳立てしたトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)、逃げのスペシャリスト阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)、U23で全日本優勝経験を持つ武山晃輔(チーム右京)、スプリンターチームから孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)、海外経験も豊富な小森亮平(マトリックスパワータグ)、モンゴルのロードチャンピオン、バトムンク・マラルエルデン(レバンテフジ静岡)、地元を背負って走る久保田悠介(ヴィクトワール広島)。

先頭グループは、協調してペースを作り、このショートサーキット内で早くも1分のタイム差を築いた。この日のレースには3回の周回賞が設定されていたが、1回目は黒枝咲哉(スパークルおおいたレーシングチーム)が獲得。この集団形成後は、2回目(16周回目)を孫崎、3回目(24周回目)を武山が獲得した。
バトムンクが脱落し、先頭集団は7名に絞られた。メイン集団は前日の疲労もあり、また一通りの強豪チームが選手を送り込んでいるため、ペースアップし、集団を捉え、仕切り直そうという動きは生まれず、事実上、優勝争いはこの7名に絞られることになった。

先頭集団内でも、残り周回数が少なくなるにつれ、勝負にかける緊張感が増してくる。ラスト5周、ルバが単独でアタックを仕掛けた。残りはまだ8kmあまりあり、この実力者たちから単独で逃げ切るのは少々厳しいのではないか、とも思われた。ただ、これまでの
レースでも、幾度となくルバの独走を見せつけられてきたが、ルバはハイスピードを維持する能力が高く、集団にペースを抑えるサポートができるチームメイトを残していることを考えれば、ルバの逃げ切りは十分現実味があるものだった。
ルバは10秒のタイム差を維持し、先行する。淡々と一定ペースを刻むと、ベテランらしく、落ち着いて180度ターンを隙のないフォ
ームでこなし、ペースの衰えはまったく感じさせない。折り返しを繰り返すコース形状であるため、先行するルバの姿は、常に追うメンバーの視界の中に入っている。勝つためにはルバを捉えなくてはならないが、追う7名の足並みは揃わず、すぐそこに見えているル
バとの差が縮まらない。

最終周回に入り、ルバを追う7名のグループは、タイム差を5秒まで縮めたものの、追い詰めることはできなかった。


5周を逃げ切り、笑顔でフィニッシュしたトマ・ルバ(キナンレーシングチーム)。2日連続の表彰台だ

ルバはホームストレートに単独で現れ、後ろを振り返るが、射程圏内に迫る選手は現れなかった。長い両腕を天に向かって挙げ、笑顔でフィニッシュ。キナンレーシングチームは広島の連戦を連勝で終えることになった。


表彰台争いは熾烈なスプリントとなった。向かって右側(フレーム外)から上がってきた阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が先行し2位でフィニッシュ

2位争いを制したのは阿部、3位にはスプリンターチームから孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)が入り、表彰台を確保した。


表彰台に立つ阿部、ルバ、孫崎。万雷の拍手を受けていた

チームとしてはこの日も別の作戦を立てていたが、展開に応じてふるまい、ルバが勝利を狙うことになった。「スプリンターチームではないので、逃げる選択をし、きつい展開に持ち込んだ」と振り返った。
実は、ルバはこのレースに参戦しない予定だったのだが、前日のレースでもらい落車をし、骨折して欠場した選手の代わりに、急遽、延泊して、走ったのだった。「このクリテリウム(に出て)で勝ったことは、自分にとって、ちょっとしたサプライズではあったが、勝利をチームみんなで喜んでいる」と、笑顔で喜びを語った。


広島連戦を連勝で終えたキナンレーシングチーム。誇らしい笑顔を浮かべていた

この日の平均速度は36.99km/hと、完全な平坦コースにかかわらず、アップダウンコースだった前日よりも5kmほど遅い。1.7kmの距離の中に3カ所も設定された180度コーナーが、いかに難しいものであったかを語っているだろう。サーキットが小さいために、先頭から
1分遅れるとタイムアウトを宣告されてしまうため、この日の完走は24名。前日に続き、非常に厳しいレースとなった。


レースを終えた各賞のリーダーたち。新人賞のホワイトジャージには変動があり、渡邊諒馬 (VC福岡)の手に移った

各賞ジャージの行方は、個人総合、ポイント賞、山岳賞に変動はなく、U23の新人賞のみ、ホワイトジャージが渡邊諒馬 (VC福岡)に入れ替えがあった。


会場に集結したヴィクトワール広島のサポーターたち

この日、会場には、ホストチームとなったヴィクトワール広島の多くのサポーターが駆けつけ、サーキットをチームカラーのオレンジに染めた。コロナ禍にありながらも、年々サポーターの盛り上がりが増している様子に、地域密着型チームが、着々と深く地域に浸透してきているのを感じた。地域が盛り上がるにつれ、選手たちの本気度も増し、年々レースの中での存在感も増しているようだ。
次戦は8月の大分、オートポリスだ。ここもまた、サバイバルレースになることの多いサーキットである。シーズン後半戦の始まりは、どのような展開になるのだろう。

(今年のJCLプロロードレースツアー)
JCL開幕戦!カンセキ真岡芳賀ロードレース
JCL第2戦・カンセキ宇都宮清原クリテリウム
JCL第3戦・広島トヨタ広島クリテリウム

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【結果】JCLプロロードレースツアー2022・第4戦「広島トヨタ広島クリテリウム」
1位/トマ・ルバ(キナンレーシングチーム)1時間22分42秒
2位/阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)+0分19秒
3位/孫崎大樹(スパークルおおいたレーシングチーム)+0分19秒
4位/武山晃輔(チーム右京)+0分19秒
5位/山本大喜(キナンレーシングチーム)+0分19秒

【JCL各賞リーダージャージ】
イエロージャージ(個人総合首位)
増田成幸(宇都宮ブリッツェン)

ブルージャージ(スプリント賞)
小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)

レッドジャージ(山岳賞)
山本元喜 (キナンレーシングチーム)

ホワイトジャージ(新人賞)
渡邊諒馬(VC福岡)

画像提供:ジャパンサイクルリーグ(JCL)

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