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2024/02/01

P-Navi編集部

第29回シクロクロス全日本選手権(女子)

第29回シクロクロス全日本選手権(女子)

第29回シクロクロス全日本選手権が、1月13日、14日に栃木県宇都宮市で開催された。関東での開催といえど、気温が下がり、好天の下でも、ヨーロッパを思わせるような真冬の気温下でのレースとなった。

会場は、宇都宮でのシクロクロスでは定番である道の駅「宇都宮ろまんちっく村」に設営された特設コース。広大な敷地の中に多様な施設が並ぶ人気観光スポットだ。
とはいえ、コースはホネのあるコース。砂区間や急勾配が続く「三段坂」など、テクニックとパワーが求められる難セクションに加え、抜きどころがなく、走り方が重要となるシングルトラック区間もあれば、スピードを上げられる平坦路も含まれる。さらに、斜面を行く「キャンバー」も含まれ、さまざまな要素がバランス良く配置され、総合力が問われる全日本チャンピオンを決めるにふさわしい舞台だ。これまでは、UCI(世界自転車競技連合)認定の国際レースも多く開催されてきた。


あらゆる能力が試されるコースが設定された(出典:日本自転車競技連盟コースレイアウト資料より)

この日、朝の時点では、キャンバー路面は硬く凍りついており、午後のレースまでに路面がどう変化するのかを読み取るのも、非常に重要な要素となった。
15日にはメインイベントである男女エリートが開催された。まずは女子からの開催となる。注目は今季好調を見せる渡部春雅(明治大学)だろう。ロード、MTBの全日本を制した小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)は、選手権の強さという点でも、重要な優勝候補となる。前哨戦となる琵琶湖を制し、調子を上げてきている石田唯や、大蔵こころ(早稲田大学)も候補に挙げられていた。

第29回シクロクロス全日本選手権の女子エリート
ヨーロッパを思わせる真冬のコンディションの中、スタートラインに並ぶ

午後1時、スタートを迎える頃までには、まだ気温も上がりきらず、日陰の路面などは硬く凍りついたままだった。このコンディションを味方に付け、勝者となるのは、果たして誰か。

好スタートを切り、最初にコーナーを回ったのは鵜飼知春(and more)。だが、小林あか里が鵜飼をかわし、砂区間へ突入した。さらに渡部春雅(明治大学)が力強いペダリング
で小林をパスし、先頭に躍り出て、難所である三段坂を登っていく。

鵜飼知春
レースが始まった。ホールショットは鵜飼知春(and more)が獲得

ここで石田唯も追い上げ、結果、早々に優勝候補3名のパックが形成されることになった。

第29回シクロクロス全日本選手権の序盤戦
早々に優勝候補達のパックができあがった

このまま展開するかと思われたが、凍りついたキャンバー区間で渡部が滑り、転倒。体制を整え、再スタートするまでに時間をロスしてしまう。先頭は小林と石田の2人になった。

小林あか里と石田唯
小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)と石田唯の2人が先行

二人とも、MTB、ロード、シクロクロスを走っており、テクニック、パワーに優れた選手と言えよう。抜きつ抜かれつ、2人のレースは展開して行った。
石田が小さなミスを重ね、小林が少し前に出た。先行した小林は落ち着いてペースに乗せていく。石田は焦るが、じわじわと2人の差は開いて行った。

選考を始める小林かお里
着実に走る小林が先行を始めた

小林はそのまま独走状態に持ち込み、淡々と周回をこなして行った。「フラット区間は全力で踏み、テクニカルセクションは脚を温存しながら、できる限り一定のペースで走る」よう自分に言い聞かせながら、走っていたと言う。

必死に追う石田唯
石田は差を詰めるべく必死に小林を追う

凍り付いた路面の苦しめられる選手
凍りついた路面が選手を苦しめる。氷のような路面に転倒を繰り返す選手も

石田は小林との差を時には5秒程度まで詰めたものの、小林を捕らえるには至らない。小林も何回か転倒もしていたが、すぐにリカバリーし、落ち着いて先頭を走り続けた。小林は最終周回も独走で終え、拍手に迎えられながら、フィニッシュラインへと飛び込ん
だ。ロード、MTBのタイトルを持つ小林だが、シクロクロスでは初めてのタイトルとなる。

3冠を達成した小林かお里
小林は独走でガッツポーズを決め、フィニッシュ。シクロクロスの初タイトルを獲得し、3冠を達成した

2位には10秒差で石田が、3位には渡部が入っている。

第29回シクロクロス全日本選手権の表彰式
チェンピオンジャージを受け取り表彰台に立つ小林と2位に石田、3位に入った渡部春雅(明治大学)

第29回シクロクロス全日本選手権の表彰式後にセルフィ―デ撮影
全てを終え、セルフィーで撮影。「普通の女の子たち」に戻ったようなホッとした笑顔を見せた

小林は「ロード、MTB、シクロクロスの3冠」を今シーズンの目標に据えていたと言う。「今シーズンも後半は精神的に辛い時が続いた。シクロクロスシーズンもなかなか勝てず、苦しかった」というが、この日は快心の勝利を収める形となった。「『絶対に勝つ』
これだけを(自分に)言い聞かせて、落ち着いて全て対処できていたと思う」とレースを振り返る。昨年は僅差で敗れ、2位となったが、今年は文句なしの優勝だった。

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【結果】
シクロクロス全日本選手権 エリート女子

1位/小林あか里(弱虫ペダルサイクリングチーム)46:11
2位/石田唯 0:10
3位/渡部春雅(明治大学)1:50
4位/大蔵こころ(早稲田大学)2:46
5位/鵜飼知春(and more)4:27

画像:Satoshi ODA

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