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2020/04/13

Norikazu Iwai

緊急事態宣言を受けての競輪界

緊急事態宣言を受けての競輪界

*本文の事実関係は2020年4月11日(20:00)現在のものです

4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために『緊急事態宣言』が東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県を対象に発令された。果たして中央競馬、地方競馬、競輪、ボートレース、オートレースの公営競技はどんな道に進むのか?という部分にも耳目が集まる。従来通りの『無観客』で行うのか、それとも『中止に』するのか。指定された地域、あるいはそうでない地域との考え方の違いはあるのかどうか__。

中央競馬は続行し、ボートレース、オートレースも同様に続行。そのような中、競輪だけは中止もあれば、続行もありと、足並みが揃っていない印象を拭い切れない。
公営競技の主催は地方自治体である。その首長の考え一つでレースを行うか、中止になるかは決まる。現在のところ青森、宇都宮、前橋、大宮、西武園、松戸、立川、川崎、平塚、名古屋、豊橋、松阪、高知、松山、別府、久留米が中止を決定した。この中で緊急事態宣言が発令された地域に含まれるのは、大宮、西武園、立川、松戸、川崎、平塚、久留米である。但し、久留米と同じ福岡でも小倉は開催を続けている。要するに北九州市はOKでも、久留米市ではNGということになる。市町村が違えば考え方もそれぞれだが、一般の国民にしてみれば、「同じ福岡で、何で?」という疑問に繋がるのは当然だ。

なぜ、競輪だけが中止になるのか?色々と、考えてみた。
まずは選手の移動距離の問題だろう。だが、これは他の競技も同じ。ならば車での参加を推奨すれば良い。次に宿舎の問題がある。JRAは調整ルーム以外に自宅や近くのホテルからもOKを出したし、馬の移動にも制限を設けた。聞くところによると、別府競輪は選手を近くのホテルに分散させるという案を示しながらも中止になった。これはどこの競輪場でもできることだが、表立った動きはない。また、中央競馬は国庫にいくら入れているとか、ボートレースは売り上げの一部をコロナ対策費にするといった具合に、世間へのアピールも忘れていない。日本財団が施設の提供を行うなど、今回の動きに対し、迅速に対処している訳である。


*KEIRIN.JP(4/13 トップページより)

これらに比べ、競輪界はどうかなのか?売り上げの一部をどうこうするとか、宿舎や移動の問題でも何一つ具体策を示していない。競馬やボートレース、オートレースは開催できて、どうして競輪だけが中止なのか?筆者は未だ理解に苦しんでいる。何よりも気になるのが競輪場ごとに判断が分かれていることだ。何を根拠にして、続行と中止に分かれてしまうのか?は大きな疑問である。恐らくではあるが、JKAがリーダーシップを取れていないのが原因だろう。ボートレースなどは中央団体が筋道をつけている。以前にも指摘したが、競輪業界は団体が多過ぎて、意思の統一がなされていない。JKA、日本競輪選手会、全国競輪施行者競技会など、それぞれの主張が違い過ぎているためにまとまらないのだ。

また、新型コロナウイルスに対する知識が乏しすぎるとも感じている。それが、4月8日、名古屋競輪の当日中止である。当日の朝、一部のスポーツ紙で競輪評論家・井上茂徳氏のコロナ感染が報じられた。井上氏は先月の29日まで福井で行われたG2ウイナーズカップを取材していた。それを知っている一部の選手が不安を訴え、その結果、中止になった。だが、井上氏の発症は保健所によると4月1日から2日に掛けてである。ということは、福井で井上氏と接触していても濃厚接触者には当たらないということだ。これは後日、新聞でも報道されている。不安は分かるが、濃厚接触者として認定されている人間がいないにも関わらずに中止になってしまうのならば……今後、そういった動きは加速していく。選手は自ら働く場所を失ってしまうかも知れない。名古屋ではシッカリ濃厚接触者はいないと、説明したのか?そのうえで選手が中止を望んだということであったのだったら、それはそれで一つの判断にはなるが__。

JKAや選手会は新型コロナウイルスに対し、選手にシッカリと、レクチャーする義務がある。しかしながら今日に至るまでそのようなことは聞かない。このままの状態が続くなら、競輪場自体が耐えられなくなってくる可能性も出てくる。無観客での開催でもギリギリ持ち堪えていたのに開催中止とまでなれば存続自体が危ぶまれる。競輪ファンとしては一刻も早くJKAがリーダーシップを取り、この現状を打破していただきたい。そう強く願うばかりである。


*緊急事態宣言後、人影もまばらな羽田空港(国内線第1ターミナル)

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