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2022/03/09

森泉宏一

『森泉宏一の実況天国』Vol.74

『森泉宏一の実況天国』Vol.74

先日、当コラムの記事を読み返していました。
記念すべき第1回の執筆は2018年11月。
現在、伊勢崎オートの支部長である猿谷敦史(伊勢崎25期)選手。自身14年半ぶり、涙の優勝について記しています。

当時の私は、まだ伊勢崎オートで実況アナウンサーを担当していました。
そんな経緯もあって、コラムタイトルは「森泉宏一の“実況”天国」に決定。
その1回目のコラム冒頭で、私はこう記しました。

同じ言葉”とは言え、喋るのと、書くのとでは随分と勝手が違います。
それ故、初めのうちは試行錯誤の繰り返しとなるかとは思いますが、皆様におかれましては温かい目で見てご覧いただけると幸いです。また、内容や題材も書き続けながら、練って、練ってという具合になるかと思います。
ひとまずの方向性としましては、公営競技の実況に関わることになった経緯。そして、苦労、報われること、喜びなどを書いてみようかなと考えております。時にはマル秘エピソードもあるかも!?

 

それから数年。今は実況から離れてしまっていますが、縁あって、今もオートレースのお仕事や、有難いことにこのコラムの連載も続けさせていただいております。

連載当初は、実況をする時に意識していることや注意点。さらには練習方法、自作の出走表の作り方や、作業で使う道具など、実況についてのエピソードがメインでした。
実況という職業はなかなかいないので、そういった路線は大歓迎という担当者さんからのお言葉もありました。

また、読み返して思い出したのは、数年前、まだ実況をしていた時の話です。
ある少年が、見学でスタジオを訪れました。見た目は小学校高学年くらい。彼は実況席に座る私の様子を、ジッと見ていました。

「将来は選手になりたいのかな?」
などと思っていると、
「大きくなったら、オートレースの実況アナウンサーになりたい」とのこと!
フェンスの向こう側ではなく、こちら側。その年代でアナウンサーという職業に興味を持ってくれただけでなく、すでに憧れであるという。
その事実に、私は嬉しい気持ちになったと同時に、大いなるプレッシャーがかかったのです。

「俺次第では、この子の憧れの職業が変わってしまうかもしれない」
「決して彼の夢を潰してはならない」

彼が見学するレース。それはある意味、SGやG1の優勝戦よりも、緊張感が増すことになったのです。
当時の私の実況を見て、彼がどう感じたのかは分かりません。

「ぜひ、僕のあとは、この席に座ってほしい」
と、別れ際にそう声をかけたのは覚えているのですが、果たして__。

あの少年は、今もその夢を持ち続けているのでしょうか。
公営競技の実況席から離れて久しいですが、時々、あの少年のことを思い出すのです。

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