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2021/12/23

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 99 Hunting

『残そうと 思う気持ちが 交わされる』
大先輩の競輪ファンの方から教えてもらった、この格言。みなさんは聞いたことがあるでしょうか? ラインを組んで走る際、前で駆けた選手を番手の選手が仕事をしてギリギリ守ろうとするも、その後ろの3番手の選手や別ラインに抜かれてしまい2着以下になることだよと、昔教えてもらったのです。
最近レースを見ていて、立て続けにこの言葉が頭に浮かびました。

一つ目は先日の松戸競輪A級決勝。
7車立てのレースで北日本勢が4車結束。先頭は青森の坂本紘規選手、番手に福島の前川大輔選手、そして福島の坂口卓士選手、4番手に坂本紘選手といとこでもある青森の坂本昌宏選手が並んでいました。4車の並びの経緯は放送中にも話題になりましたので、興味のある方は調べてもらえればと思いますが、自力2車に追い込み陣もしっかり。対戦相手にとっては強敵であったに違いありません。
しかし結果、優勝したのは別線栃木の矢野昌彦選手。坂本紘選手に主導権を奪われた後も4番手の内でじっとこらえ、チャンスをうかがっていました。前川選手が外からの捲りを牽制して車間を切る。それによって3番手以降が詰まって一瞬、内が空く。その隙を見逃さず、ものにした矢野選手。かっこよかったですね。北日本は4車連携でしたが内をすくわれたということで、悔しい一戦になったのではないでしょうか。

そして、立川競輪のS級決勝でも。
人気を集めていたのは宮城の菅田壱道選手。前を福島の酒井雄多選手に任せての競走。初日から余裕の番手での立ち回りを見せていた菅田選手は、準決勝でも酒井選手の先行の後ろを回り、車間を切って仕事してゴール前でチョイ差し。決勝戦で人気になるのも当然のことだったと思います。
しかし、ここも優勝したのは別線。神奈川の松谷秀幸選手でした。
主導権を握ったのは酒井選手でしたが、番手の菅田選手は神奈川の堀内俊介選手と絡むような展開に。2車が出切った後の最終2コーナー。堀内選手の仕掛けを気にして、菅田選手が大きく牽制をした瞬間、松谷選手が内へ切り込み、そのままインから捲っていきました。そして先行の酒井選手も抜き去り、松谷選手が7月の松戸F1以来となる優勝を決めました。

どちらのレースも別線にイン捲りを打たれて、敗れたレースです。冒頭に書いた格言での印象は、どちらかというと外から交わされることをイメージしていた私。なぜインからすくわれることが続くのだろうと疑問も浮かびました。もちろん、レースなので、たまたまということもあるかもしれませんが、色んな想像が浮かびます。
現在の競走では、どちらかというと自力選手が勝ち上がることが多く、結果、自力-自力で並ぶことが増え、牽制などのヨコの動きの甘さがあるのかな?
7車立てによってラインが3車で組めなくなり、内をしめる3番手がいなくて、番手の仕事の仕方が難しくなってきているのでは?
選手それぞれの技量? 相手のうまさ? バンクによっても変わってくる?
などなど色々浮かびましたが、もちろん、この2つのレースだけで結論を出すことはできません。ただ一つ、時代と共にレースが変わってきたことが影響しているのかなとは考えています。教えてくれた大先輩がずっと見てきたのは、9車の競輪の時代。レースや選手の走りが変わっていけば、格言も変わっていくのも自然なことですよね。
そこで『残そうと 思う気持ちが すくわれる』というのを新競輪格言(仮)として付箋で心に貼っておこうと思います。これからの競輪をしっかり見届けて、この「(仮)」を外して心に刻むか考えたいところです。

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【「恋して競輪ハンター」過去コラムはこちら】
98Hunting「心を射抜かれた諦めない競走」
97Hunting「阿部様の引退」
96Hunting「関東ラインの強さについて」
95Hunting「番手捲りに思うこと」
94Hunting「山口拳矢選手は競輪界の原始星」
93Hunting「車券購入は自己責任」
92Hunting「東口高配当流星群」
91Hunting「オールスターのワンツー決着」
90Hunting「穴党は孤独で勇敢な戦士」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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