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2021/12/08

Sakura Kimihara

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 98 Hunting

「ストライクゾーン」__。
もともとは野球用語ですが、俗に好みの異性の範囲を例えるときに使う言葉でもあります。身内に限らずファンの方でも、私をよく知っている人は、私のストライクゾーンが、とてつもなく広いことはご存じだと思います。しかし、そんな私でも、直球ど真ん中に突き刺さるような好みの方に出会うこともあるんですよ。
それが11月29日の松戸F2ナイターの12レース、A級初日特選でした。このレースは、神奈川の川越勇星選手と宮城の曾澤龍選手、埼玉の吉田裕全選手の3分戦。川越選手が後ろ攻めから前を叩いて主導権を握って残り2周、吉田選手がそれをさらに叩きに行って川越選手と踏み合いの展開に。残り1周手前で前の踏み合いを見ていた曾澤選手のカマシが決まって、北日本ラインが前に出切りました。
そのあとです。
一杯になった吉田選手の番手から、群馬の小林潤二選手が切り替え、自ら遥か前を走る北日本ラインを追っていったのです。身体を揺らし、頭を振りながら必死に追う小林選手。しかし、その内にはまだ川越選手がいて、小林選手は33バンクの外を走っていました。後ろからは、切り替えた地元の佐藤清之選手の追い込みもあり、「絶対に最後、抜かれちゃう~!」と思っていると、なんと最後の直線まで踏み切って3着入線。前の北日本ラインを抜くことはさすがにできませんでしたが、並走を乗り越え、最後のハンドル投げまで。ベテラン追い込み選手が意地の競走を見せてくれました。ライン競走において、追い込み選手は、どうしても苦しい状況になることもあると思いますが、残り1周で自力を発動できるというのは、ずっとS級で戦ってきた小林選手の強さを改めて思い知る瞬間でもありました。

え、かっこいい……。そして、何、この気持ち__。
少し戸惑いながら、ふと手元のアオケイ新聞に目をやると、小林選手の短評にこう書いてありました。

『諦めない競輪好感』

米大リーグの大谷翔平選手もびっくりのど真ん中ストレートが、私の心を射抜きます。記者さんが私の心に湧いた感情を、8文字できれいにまとめてくれていました。
諦めない走りというのは、車券を買っているファンにとって本当に嬉しいもの。ゴールを待たずして自分の車券が外れると察知することは展開上で時折ありますが、小林選手のように最後までもがいてくれる選手を買っていると、ドキドキハラハラがぎりぎりまで続きます。たとえ、その結果が外れだとしても、最後まで興奮をくれたことに、買ってよかったと思えるんですよね。興奮とともに車券も当たった私は、翌日からは、うちわ持って応援したいくらい潤二さん(途端に名前呼びの馴れ馴れしさ)にメロメロ。
しかし、翌日は番手牽制から降りたところで落車失格。私の芽生えたばかりの恋心に、冬の訪れを知らせるような木枯しが吹いた2日
目でした。

それでも、初日のあのレースで燃え上がったこの気持ちは、そう簡単には消せません。潤二さん、そして小佐野選手のケガがひどくないことを願いながら、復帰を待ちたいと思います。
またあの諦めない競走が見たいです! 潤二さ~ん!

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【「恋して競輪ハンター」過去コラムはこちら】
97Hunting「阿部様の引退」
96Hunting「関東ラインの強さについて」
95Hunting「番手捲りに思うこと」
94Hunting「山口拳矢選手は競輪界の原始星」
93Hunting「車券購入は自己責任」
92Hunting「東口高配当流星群」
91Hunting「オールスターのワンツー決着」
90Hunting「穴党は孤独で勇敢な戦士」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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