TOP > コラム > 『森泉宏一の実況天国』Vol.108

コラム

一覧へ戻る

コラム

2024/06/19

森泉宏一

『森泉宏一の実況天国』Vol.108

『森泉宏一の実況天国』Vol.108

先日は社会人野球の試合実況のため、群馬県太田市へ行ってきました。
太田市といえば、自動車メーカー「SUBARU」発祥の地。
東武線の太田駅を出ると、「SUBARU」のロゴは配した大きな本工場がそびえ立っています。
本工場の住所は太田市スバル町。愛称ではなく住所に採用することで、「スバルの町・太田」を広くアピールする地名となっています。
市内にはSUBARU関連の工場や企業がいくつもある、企業城下町。

今回、実況を担当した大会には、そんな地元の大企業が有する野球部の出場もあり、大会は多くの観衆で盛り上がりを見せました。

「都市対抗野球」と呼ばれる全国大会への最終予選と言われる今大会。
今回、筆者が実況を担当した試合では、いわゆる「本命印」が付くチームが次々と敗退。
そして無印か穴印。「番狂わせ」「ジャイアントキリング(大物食い)」という試合の連続でした。
名門に勝利した新興チームの監督さんたちは試合後、
「名門と言われる相手に100回やっても勝てないと言われてきた」
「一生懸命やっていればこういうこともあるんですね」
勝負において、未来永劫などというものは存在しないと、改めて感じた大会でした。

世間一般で言われる波乱の結果となっても、筆者は実況中のフレーズとしては極力使わないよう意識しています。
「強いから勝つ」ではなく、あくまで「勝った方が強い」という方針。
これが公営競技の実況となると、少し変わってきます。
公営競技にはスポーツ競技にはない「オッズ」というものが存在します。数字として人気、不人気がはっきり出ており、しっかりと「見える化」されています。
しかし、配当面での波乱として伝えることはあっても、野球実況の時のチームに対するものと同様、選手に対して「波乱」などというニュアンスのフレーズは使わないように意識してきました。
本命ではない選手に対して、失礼な気がするのがひとつ。
あとは敗れた本命選手が、他者のアクシデントによる不利で、自身の責任だけで負けた訳ではない場合もあります。
勝負というのは相手があることなので、どうしても勝ち負けというのは存在します。
いくら自身の状態が良くても、勝てるとは限らないのが勝負の世界。
「絶対」というものは存在しない、ということです。

ただ、実況中のテンションや声の張り具合によって、
「本命敗れる!」
「順当ではない」
というものが伝わるようにしています。
「しています」というのは、声の強弱やテンポなど意識的にやる場合もありますし、自然とそうなる場合もあります。
それまでの経緯を知っていたり調べたりしていれば、自ずと出てくるものだと思います。

さて、話は変わり、今回の野球実況終わりに、同じ群馬県内にある伊勢崎オートレース場へ立ち寄りました。
久々に行ってみると、レース場近くに全国チェーンのラーメン屋やカフェが出店するなどの変化はありましたが、場内はいい意味で変わることなく盛り上がっていました。

訪れた時は「G2稲妻賞」の3日目。次の用事の関係で3レースほどの短い滞在(滞在時間はちょっとだけ、車券の負けもちょっとだけ)。

実は伊勢崎のスタンドでレース観戦。これまで片手で数えるほどしかなかった筆者。


メインスタンドや1・2コーナーのスタンドなど、様々な角度からレースを観ていましたが、どの場所から写真に収めても画になるレース場だと改めて感じた次第です。

場内をブラついている間、
「お久しぶりです!」
「『燃えろ!!オートレース』観てますよ!」
などと、1回くらい声を掛けられるかと思いましたが、皆無。

すみません、自意識が過剰すぎました(苦笑)。

【余談】
序盤でSUBARU工場の話を書きましたが、戦後、大衆車の草分け的存在となった軽自動車「スバル360」は、太田市ではなく隣の伊勢崎市で作られたそうです。
偶然にもSUBARUで始まり、SUBARUで終わる出張となりました。

12

ページの先頭へ

メニューを開く