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2023/10/27

岩井範一

寛仁親王牌を振り返る

寛仁親王牌を振り返る

終わって見れば、古性優作の強さだけが際だった、今年の寛仁親王牌・世界選手権記念トーナメント(G1)だった。ニューヒーローの誕生を期待していただけに、少しばかり拍子抜けした感は否めない。

決勝メンバーは、小松崎大地に佐藤慎太郎、渡部幸訓の福島3車。古性に南修二の大阪勢。犬伏湧也には地元の諸橋愛。和田健太郎と河端朋之が単騎の構成。犬伏とラインのはずの河端は、自らが自力選手ということと、諸橋との競りを避けたのだろうか。後述するが、チャンスを逃したと思っている。
展開予想は、犬伏が逃げると読んでいたが、前を取った福島勢が、そのまま先行。脚を使わず、4番手をキープしたのが古性。大阪勢の後ろに和田。犬伏は7番手からの組み立てになった。問題はいつ、犬伏が踏むかだったが、遅すぎた。あれでは、小松崎が腹を括るのも分かる。いくら爆発的なダッシュやパワーがあっても、G1の決勝では7番手からは無理があった。結果論になってしまうが、もっと早く前に出ることは出来なかったのだろうか? ビッグレースにおける犬伏の負けパターンが、ここでも出てしまった。犬伏の良さは、気っ風の良さであるだけに残念でもあった。

第32回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントG1決勝最終HS中団の古性優作
決勝の最終HS、3・古性優作は中団からチャンスをうかがう

優勝した古性は、完璧なレース運びだった。完璧というよりか、他の7人が古性の存在にビビっていたからこそ、あの位置を、苦もなく回れたのだろう。完全優勝に、今年3個目のG1。加えて、今年の獲得賞金も2億円を超えた。勢いはとどまることを知らないし、これに脇本雄太が復帰したあかつきには、近畿の時代が続くだろう。決して多くを語らない古性は、昭和のレーサー感が出ていて、それがまたファンにはたまらない要素になっている。

犬伏が踏み出した瞬間に離れてしまった諸橋。ファンにとっては、言葉もでないほどだったであろう。仮に、河端が犬伏の2番手であったなら、どうなっていたのであろうか? 河端も単騎を選んだならば、あの位置では厳しい。せめて古性の位置か、6番手なら一撃があったかもしれない。和田も惜しかった。予選からの伸びは抜群だった。落車をしてしまったが、佐藤と南の間を突っ込むことができれば、可能性は残ったであろう。落車後はフラフラになりながらも、ゴールを目指した姿に、来場したファンから大きな声援が送られた。痛々しかったが、最後までゴールに到達するという義務を果たしたと言っていい。

4日間の売り上げは、82億185万7400円。目標の83億に達しはしなかったが、健闘した部類だろう。しかしながら、マイナスはマイナスであることを、関係者は忘れてはならない。

グランプリ戦線を見れば、すでにG1優勝で出場が決定している古性が今回も優勝、賞金面で当確の佐藤が準優勝で、大きな変動はなかった。郡司浩平、深谷知広、新山響平の一人でも勝ち上がっていれば、さらに面白くなったのだが、今回の結果を受けて、脇本雄太が大きく前進したと言えよう。

Text/Norikazu Iwai

Photo/Perfecta navi編集部

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