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2018/12/22

Yuji Yamada

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.38

“帝王”山田裕仁の競輪哲学 Vol.38

KEIRINグランプリ2018は静岡競輪場で初開催されます。
12月18日、グランプリ前夜祭が行われ、GI獲得数と獲得賞金順に選手自らが車番選択できるという初めての試みで想定番組の発表となりました。

1/三谷竜生(奈良101期)
日本選手権と高松宮記念杯の特別競輪を連続優勝して、現時点で賞金ランキングも1位。グランプリでは脇本選手の番手を回れることで、優勝に一番近い位置にいる選手でしょう。今回のメンバー構成は脇本選手の先行1車に近いだけと思われるので、スンナリ番手を回れるかが鍵でしょう。優勝できれば同年で3度の優勝が同選手の番手からというのも恵まれた感がありますね。

2/浅井康太(三重90期)
特別競輪優勝が7年ぶりという競輪祭優勝で出場。獲得賞金でも出場を確定していた選手だけに、1年間、いかに安定感のある走りをしてきたのかが分かると思います。グランプリでは単騎での戦いになりますが、自在戦が得意なだけにラインに縛られた走りよりも単騎はプラスに働くのではないでしょうか。競輪祭では先行する脇本選手の3番手から優勝していますけれども、今回はライン4車の脇本選手、巧く位置を取っても5番手となり、どのようにしてレースを運ぶのかセンスの見せどころ。

3/脇本雄太(福井90期)
オールスターで特別競輪初優勝したかと思えば、続く寛仁親王牌で連続優勝。今年は充実した1年だったことでしょう。ワールドカップでも優勝しているように脚力は世界レベル。今年の競輪界はこの脇本選手を中心に回ってきたと言っても過言ではありません。グランプリでは近畿の先頭で先行宣言。他に先行争いを挑んでくる選手も見当たらず、マイペース先行で逃げ切る可能性は高いのではないでしょうか。

4/新田祐大(福島90期)
今年は全日本選抜優勝で、グランプリ出場権を1番初めに決めた選手。しかし、ナショナルチームの活動を優先しているため、出走回数も少なく、獲得賞金も少ない。この1年、競技に力を注ぎながらも、グランプリ優勝に向けた練習にも集中できたと思えば、パワーアップして出走してくるはず。グランプリでは単騎での戦いになり、対戦メンバーから位置取りに関してはやや不安が残るような気がします。でも、トップスピードを考えれば、脇本選手の先行を捲ることができるのはこの選手なのかも。

5/村上博幸(京都86期)
賞金獲得上位者でグランプリ出場。4年ぶりのグランプリ出場ということですが、今年はケガに泣かされることもなく、調子を維持できたことが安定した成績に繋がったのではないでしょうか。レースセンスもピカイチですから、ケガなく練習できていれば、まだまだトップレベルでやれる選手。グランプリでは近畿の4番手を固めるということで、優勝には展開の助けがかなり必要となってきます。

6/清水裕友(山口105期)
寬仁親王杯で脇本選手を相手に先行、地元の防府記念で記念初優勝、競輪祭の決勝戦で3着と、特に後半戦の目覚ましい活躍で賞金ランキング逆転でのグランプリ出場。グランプリでは単騎での戦いになってしまい非常に残念ではあるのですが、初出場ながらもレースを面白くしてくれるのはこの選手だと期待しています。グランプリ独特の雰囲気の中、初出場でどんな思い切った走りができるのか?楽しみの一つであることに間違いありません。

7/平原康多(埼玉87期)
今年はG2共同通信社杯優勝もG1の優勝はなく、賞金ランキング上位者での出場。特別競輪の決勝戦にはコンスタントには乗っているだけに安定感は抜群であります。グランプリでは武田選手の前回りでレースを動かしていきますが、競輪祭の決勝戦で脇本選手の先行スンナリ4番手からの捲り不発を経験しているだけに同じ失敗は繰り返さないという気持ちが強いことでしょう。

8/武田豊樹(茨城88期)
今年はG2ウィナーズカップ優勝と、前半戦の活躍による賞金ランキング上位者での出場。昨夏の骨盤骨折から調子を徐々に上げてきたが、まだ苦戦は続いているような印象。グランプリでは平原選手の番手回りとなりますが、現在の近畿勢隆盛以前はこの関東勢のゴールデンコンビが競輪界を席巻していました。平原選手次第という感はありますけれども、相性の良さに期待したいところ。

9/村上義弘(京都73期)
ノンタイトルでの出場となりますが、今年も特別競輪で2着を続けるなど、持ち味である“魂の走り”は健在で、それを随所に見せてきました。S級1班の黒レーサーパンツを履いていることを忘れさせる走りができているのではないでしょうか。グランプリでは近畿の3番手を固めるとのことだが、司令塔の存在感はとても際立っている。


[写真は昨年、平塚競輪場でのKEIRINグランプリ2017]

グランプリは脇本選手がレースの流れを作っていくのは確か。今年の脇本選手の強さ、メンバー構成的にも有利になるような気がします。そこで脇本選手の最大の敵となるのは年末の気温が下がった寒さの中、屋外でのレースという環境が最大の敵になるような気がしてなりません。
平成最後のグランプリ、優勝賞金1億円超えの争奪戦はファンのみなさんの記憶にきっと残るレースとなることでしょう!

そして、文末になってしまいましたが。
読者のみなさん、今年も私の拙文をご愛読いただき、どうもありがとうございました。どうか良い年末年始をお迎え下さい!

【略歴】

山田 裕仁

山田 裕仁(やまだ・ゆうじ)

1968年6月18日生 岐阜県大垣市出身
1988年5月に向日町競輪場でプロデビュー
競輪学校の同期で東の横綱・神山雄一郎(栃木61期)、西の横綱・吉岡稔真(福岡65期・引退)らと輪界をリード
“帝王”のニックネームで一時代を築いた
2002、2003年の日本選手権競輪(ダービー)連覇などG1タイトルは6つ
KEIRINグランプリ連覇を含む史上最多タイ3度の優勝など通算優勝110回
通算獲得賞金は19億1,782万5,099円。
2002年に記録した年間最高賞金2億4,434万8,500円はいまだに破られていない
自転車競技でも2001年のワールドカップ第3戦(イタリア)で銀メダルを獲得するなどの実績を残した
2014年5月に引退して、現在は競輪評論家として活躍中
また、競走馬のオーナーとしても知られる

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