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2021/04/20

Norikazu Iwai

昨年度の車券売上高に思うこと

昨年度の車券売上高に思うこと

2020年度の競輪車券総売上高が、JKAから発表された。7499億9019万6400円で、前年度比は113.6%。関係者は大幅増に沸き立っていると聞いたが、果たしてそれでいいのだろうか? 競輪の売上高は1991年度の1兆9553万4012万4900円をピークに下降線をたどってきた。下降線というよりは、ジェットコースターで一気に下るといった方がいいかもしれない。1兆を割ったのは2003年度。2019年度は6604億6055万5100円で、それでも最盛期と比べると、3分の1まで減っている。
7000億円台に達したのは、2009年度以来である。確かに、額だけを見れば久々の7000億円台。「来年度は8000億円だ」と言った関係者がいたらしいが、他の公営競技に目を向けると、ボートレースは前年度比35.7%増の2兆951億4217万8000円、地方競馬は同30.1%増の9122億8711万460円。レース数や開催日数が違うので一概に比較はできないが、少なくとも競輪よりは上がっている。オートレースも同28.1%増の946億4554万800円である。


はっきり申し上げれば、業界は自己満足で十分なのだろうか。コロナ禍で巣ごもりが多くなったが、それを顧客にしたのはボートレースと地方競馬であろう。競輪は初動が酷すぎた。昨年4月以降、ネット投票が主流になりながら、ボートレースや地方競馬に遅れを取ってしまった。慌てた業界はメディアを使って、ポータルサイトの入会方法などをPRしたが、焼け石に水。その後は若干、持ち直しはしたものの、それでもネット投票の割合は、他の競技に比べて低い。もちろん、レースの醍醐味は本場での観戦だが、現状の環境では、ネット投票に依存しなければならない。有観客に戻れば、それだけで満足なのだろうか。考えてみれば、新型コロナウイルスは収束の兆しが見られない。いつまた無観客になるか分からない状態である。売り上げは伸びたが、それは公営4競技のうち3番目。ボートレースとの差は、4倍近くある。地方競馬とは約1700億円の差だ。過去、閉場が相次いだ地方競馬ではるが、2020年度は29年ぶりに9000億円を超えた。
内部だけを見るのではなく、ライバルとされる競技に目を向けるべきであろう。他の競技の関係者は、競輪は眼中にない。地方競馬はボートレースを見て、ボートレースは中央競馬を見ている。しかしながら、この業界はあくまでも内部のことで一喜一憂していると感じる。来年度は地方競馬を抜いてやる、といった気構えが聞こえてこない。果たして来年の今頃、競輪業界はどうなっているのだろうか?

5月には昨年中止になった「G1日本選手権競輪」が開催される。とは言っても、開催場所の京王閣競輪場は「まん延防止等重点措置」に指定されている調布市にある。さらに今の状況を考えれば、緊急事態宣言が発出されてもおかしくはないだろう。日本選手権については何らかの動きがあると考えているので、それは次回に触れたいと思う。

 

(※写真はイメージです)

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