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2022/04/19

木三原さくら

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター

恋して競輪ハンター 107 Hunting

あれから数日が経っていますがが、今もまだ、私の中にその余韻が残っています。
平塚競輪開設72周年記念「湘南ダービー」決勝戦。
優勝したのは、福島の佐藤慎太郎選手でした。埼玉の平原康多選手の先行をマークし、最後の直線で抜け出しての優勝。そう、平原選手の先行です。このレースで逃げるのが平原選手だと、どれだけの人が予想していたでしょうか。私にとっては、思いもしなかった展開でした。しかも、打鐘からの先行。ホーム・バックを付ける(専門紙なら打鐘も含めてJHBですね)先行。改めて振り返っても、感嘆の声しかでません。

「スイッチが入った。郡司君を出させたくないと思った」と、レース後のコメントを見ました。若手先行選手同士がスイッチが入ってのもがき合いなどは”競輪あるある”ですが、S班とS班のもがきあいは、なかなか見られるものではありません。それで、このメンバーの中で決勝戦で逃げて3着に残る。もちろん番手の佐藤選手の好ブロックもあったからだとは思いますが、驚きと興奮で語彙(ごい)力を失った私は、「S級S班のスイッチこえーつえー」と、思うばかりでした。
関東の大将・平原康多の先行を、他の選手は、どう思って見ていたのでしょうか。特に普段、平原選手の前を回っている関東の若い先行選手は、この走りを見て、奮起しないはずがありません。今後の関東の連携も、また楽しみになりました。
また、最後のゴール前での攻防もたまりません。古性優作選手と山田庸平選手のせめぎ合い。見てるこちらが、叫んでしまうくらいの激しさ。本当に危険と紙一重のやりあいを受け合うということは、互いに素晴らしい技術と力があるからだと感じました。

平塚記念は、まだ競輪初心者だった頃にも、大興奮の決勝戦を見せてくれました。開催後、飲みに行った競輪を知らない友人にまで、初心者なりに、そのレースについて熱く語ったことを覚えています。年々、選手への思い入れが強くなって、応援に熱が入りすぎたり、また逆に妙に冷めた距離感でレースを見たりすることもありましたが、今年の平塚記念で初心者の頃のような純粋に「競輪」そのものを楽しむことを思い出しました。
競輪は、そのレースの半分はかけ引きが占めていると考えています。周回中の組み立ての中で、相手より優位に立ち、相手の脚力を削る、または力を発揮させない展開に持ち込む。レース後に「脚使わされちゃったね/余しちゃったね」とか「展開がきつくなっちゃったね」などと回顧することもありますが、それも競輪の面白さに違いありません。
しかし、今回の平塚記念決勝のように、力と力がぶつかり合うレースを見たときの興奮はまた格別。しかもS班の選手を含む超トップの選手にそんな走りを見せられたら、しばらくは、どれだけ負けても「競輪やめる!」なんて言えなそうです。

冒頭で伝えた通り、今でもまだあの決勝を思い出してドキドキしています。もういい歳だし、そろそろ愛だの恋だの言うのは卒業しようかと思っていた今日この頃ですが、やっぱりこの気持ちは恋なのでしょう。
何年経っても競輪に心を奪われっぱなしです!

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【「恋して競輪ハンター」過去コラムはこちら】
106Hunting「レースと重なる人生模様」
105Hunting「負けてる時の打開策」
104Hunting「繋がっていく玉野競輪」
103Hunting「おかえりワッキー」
102Hunting「面倒な客」
101Hunting「研究と進化を続ける競輪選手」
100Hunting「グランプリを振り返って」
99Hunting「残そうと 思う気持ちが 交わされる」
98Hunting「心を射抜かれた諦めない競走」
97Hunting「阿部様の引退」
96Hunting「関東ラインの強さについて」

【略歴】

木三原さくら(きみはら・さくら)

1989年3月28日生 岐阜県出身

2013年夏に松戸競輪場で
ニコニコ生放送チャリチャンのアシスタントとして競輪デビュー
以降、松戸競輪や平塚競輪のF1、F2を中心に
競輪を自腹購入しながら学んでいく
番組内では「競輪狂」と、呼ばれることもあるほど競輪にドはまり
好きな選手のタイプは徹底先行
好きな買い方は初手から展開を考えて、1着固定のフォーメーション
“おいしいワイド”を探すことも楽しみにしている

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