E-バイクで走る「クマイチルート」Day2

「この先、水がかなり溜まっているので気をつけてくださいね」。オートバイで走行管理をしてくださる方が、声かけをしていた。せっかくオフロードも走れる種類のEバイクを確保したので、舗装が荒れた部分も走ってみよう、という取り計らい。装備は十分なのだが、テクニックなどが伴うのだろうか。少し不安を抱えながらスタートした。
少しやんちゃな道を行く。少年の頃に戻ったように楽しんだメンバーも
オフロード、とまではいかないが、路面は降った雨が溜まっていたり、苔や落ち葉があったりと自然のままの状態で、通常のオンロードバイクでは避けてもよい区間。だが、今回のバイクはタイヤも太く、この程度の路面ならへっちゃらだ。みな神妙な表情でここを走っていたように見えたが、後で聞くと「わざと水溜まりに突っ込んでみた」と笑う参加者も。わんぱく少年に戻ったように、この区間を楽しんだようだ。路面に左右されず、どこでも走れるバイクは、やはり強い。
美しい古座川にかかる橋を渡る
川沿いの道を行き、クリスタルな水が流れることで知られる清流古座川に合流。古座川とともにしばらく降ってくると、大きな大きな岩が現れた。これがあの「一枚岩」だ。
「一枚岩」は「古座川弧状岩脈」の一部。高さ150m、幅800mという信じられないほど巨大な一枚の岩なのだ。当然、この大きさは日本最大級。
巨大な一枚岩に到着。一枚の写真に収めるのは至難の技だ
写真を撮ろうにも大きすぎて、全容を入れ込めないのが悩ましいところ。皆、この大きさを写真に収めようと試行錯誤していた。Eバイクとはいえ、山歩きもあり、疲労の色が見えてきていた人もいたが、ほぼ全員がこの絶景を楽しむべく、階段を降りてきた。河原から見上げてみると、この大きさがよくわかる。途方もない大きさだ!
ここで地元グルメの差し入れがあった。和歌山県民なら皆が知っているという「プラムハニップ」というジュース。「昔懐かしいおばあちゃんの梅ジュースの味」ということだが、甘さと酸味が疲れに効きそうだ。「遠足といえばプラムハニップ」だったらしい。ちなみに「昔はもっと甘かった」とか。地域をめぐり、その素顔を感じられるようなモノに触れられるのが、自転車旅の魅力の一つだと思う。
ここで主催者から提案が。最後の立ち寄りだった「滝の拝」までは15km程度あり、疲労している方もいるため、ここをカットして、直接、宿に向かっても良いとのこと。悩んだ方もいるようだが、結局は、全員が「滝の拝」まで行くことになった。
行くと決めたからには、楽しく行こう! お疲れモードを吹き飛ばしながら、最後の立ち寄りへ向かう。古座川から、ルートはカヌーを浮かべると、宙に浮いているように見えるほど水が澄んでいると言われる清流小川(こがわ)沿いへと入る。川の流れとともに、どこか心懐かしい田園風景の中を行く。ところどころに桜の花が見える。山桜だけでなく、里にも桜が咲き始めているようだ。
「滝の拝」に到着!絶景だ
大小の穴が開いた岩床の間を澄んだ水が流れる
ついに滝の拝に到着! ここは、稀有な眺めを楽しむことができるスポットだ。川床はすべてが岩でできており、大小さまざまな岩穴が開き、うねりのような、月面のような、独特な形状を生み出している。陽が傾き、光が山に遮られて影になってしまっていたのが残念だったが、太陽の光に照らし出されると、この岩の凹凸が浮かび上がり、この岩床が間を流れるクリスタルブルーの水とともに醸し出す様子は、まさにここにしかない絶景なのだ。
一同は岩床の上に降りたり、橋の上からの眺めたり、このスポットを満喫した。
登坂のボリュームもあり、パワーを使ってしまった参加者も多く、60kmほど走ってきて、気になるのがバッテリーの残量だ。だが、少ない方でも2目盛程度は残っているようで、ここからは上りもほぼなく、10kmほどの道のりなので問題はないだろう。「最後まで頑張りましょう!」と声を掛け合い、いざ、ゴールへ!
周囲には、個性ある岩の景観を楽しめるスポットが多い。「虫喰岩」に似た岩を発見
さらに傾いた日差しに照らされた景観は、より優しく見えた。名残惜しく思いながら、美しい小川を眺めつつ、ゴールへ向かう。
バイクの扱いや走り方にも慣れてきており、一同は足なみのそろった快走で、ゴールの「ぼたん荘」へ到着。2日間、117kmの道のりも、見事に完走だ!
獲得標高1890mの実感は驚くことに全くないのだが、走行感はしっかりとあり、それなりの疲労感と、これだけ走ったという達成感が漂う。痛みが残るような激しさはなく、身体に効く運動になっていることだろう。心が和むような気持ちのよい景観が続き、楽しいライドだった。
ゴールの「ぼたん荘」はサイクルステーションでもあった
2日間頑張ってくれたEバイク。いい仕事をしてくれました!
今回使用したEバイクは、クマイチルート上の上富田町の「KMICH」や、すさみ町のレンタサイクルステーションの「JR周参見駅」「サンセットすさみ」「すさみ町多世代交流施設 E’cora」などで貸し出し可能。
クマイチは、今後メジャーになり、国内外から観光客を集めるルートになりそうだ。情報も増えて来ることだろう。1周することの価値はあれど、宿泊を挟んだとしても、サポートなしには200kmを超えるコースを一度に走破するのはハードルが高い。コース内の一部を走った今回のように、数回に分けて訪問して走り、余裕を持ってエリアを楽しむのが現実的かもしれない。また、今後ツアーパッケージも登場してくることだろう。
サイクリングは密を作らず、ひとりでも、少人数でも楽しめるアクティビティー。今年から、クマイチに挑戦してみてはいかがだろうか。
※ガイドラインに従い、感染予防への最大限の配慮をして走行しております
画像:編集部、山本賢
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