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2021/12/10

P-Navi編集部

【e-bike×路線バス】雪中の石北峠チャレンジ

【e-bike×路線バス】雪中の石北峠チャレンジ

今回のバイクは深い前傾姿勢にはならず、景観を眺めやすい。当然その分、風の抵抗は大きくなる。しかし、アシストがあるため、向かい風の上り坂でも、景観を楽しみながら上ることができる。「e-bikeって、イイですね!」と智香さん。太めのタイヤで安定感もあり、落ち葉が散乱する濡れた路肩でも怖くない。ルート沿いの景観は、林や草原、小川などと多様で、遠方の山々も眺めることができ、飽きずに走ることができた。

しばらく白樺などを楽しみながら走る。すると空が暗くなり、時折、雨粒が落ちて来るようになった。コーナーを回り、前方の山々を見て、二人は凍りついた。山が、白いのだ。「標高が高いところは、もう雪が降り始めているんでしょうね」。客観的に、それほど「遠景」ではない気もするが、半ば自分たちに言い聞かせるように、言葉を交わした。若干の不安がよぎったが、木々に白い雪がかかる景色は、クリスマスを想起させ、悲壮感は感じなかった。まだ「雪」への現実的な感覚がなかったのだ。


山の景観に違和感を覚えた


よく見ると、確かに白い!

サポートカーが我々のところまでやってきた。「気をつけた方がいいですよ、対向車の上に、雪が積もっています。峠の向こうは、おそらく雪です!」と伝えてくれた。雪が積もっている? でも、空は明るく、まだ10月半ばなのに! お礼を言いつつも、この時点でも、まだ「まさか」と思っていた。


葉の上に雪が積もっている

だが、このあたりから雲行きは本格的に怪しくなっていった。コーナーを回って、息を呑んだ。思わずバイクを止めた智香さんが「これ、雪じゃないですか?」と、道沿いに広がる植物の葉を指さした。白いものが乗っている。「確かに、雪ですね」と、筆者もうなずいた。この地点で、もう雪が積もっているとは!
この後は勾配も上がっていく。ここで、いったん休憩し、補給することにした。持ち込んできた大福を頬張る。残すは10kmあまり。厚着していたため、身体はホカホカだったのだが、止まってみると、気温はかなり下がっているようだった。


赤大福の中身は、白のつぶあん。食感も楽しくておいしかった

エネルギーをチャージし、再スタート。ここからが本番のヒルクライムだ。
だが、ほどなく、雪が眼前に舞い始め、あっという間に前が見えないほどの雪に変わってしまった。激しい向かい風に乗って雪が吹き付けてくる。冷たい!
バイクはあくまで優秀で、ペダルを踏み込めば、我々を上へと運んでくれる。だが、雪で前がよく見えなくなってきた。「ここで止めましょう、もう危ないです!」。二人で自転車を止め、サポートカーを呼んだ。カラダもバイクも、もはや真っ白だった。
協議の結果、とりあえずクルマに乗り、安全を確保し、様子を見ることになった。峠までもう少しだったのに残念!

しばらく待避すると、雪はかなり穏やかになり、路面状態も落ち着いた。「走りたいです!」。車から降り、峠までの数kmを走ることになった。フワフワと舞う雪の中、白く染まった景観の間を走るのは、特別な経験だ。智香さんもこの状況が楽しくなってきたのか、雪の中、笑顔で走っている。


舞う雪の中を走る。思わず楽しくなる智香さん

黄色か赤色かと、紅葉の絶景を楽しみにしてきたけれど、峠の景観は白に覆われていた。想像とは異なる真っ白い絶景の中、橋を越え、峠にたどり着いた。一部ショートカットしたけれど、ともかくも峠に着いたのだ!


完全な雪景色に突入。カラフルな景観はなかったけれど、白もそれはそれで美しい


石北峠、到達! 一部クルマに乗ったけれど、峠に自転車でたどり着く感動は味わえた

ここで再び、吹雪のような天候に。絶景を眺めながらの食事は断念し、車内でランチボックスを開く。おにぎり、唐揚げ、たまご焼き、焼き魚、明太子……ランチボックスは驚くほど豪華だった。廃棄される運命にあった料理を、こんなにおいしくいただけることに、幸せを感じる。


ランチは、おにぎりもおかずも、たっぷり詰まっていて、ひとつひとつのおいしさと思いやりに感動

展望台に登ることも諦め、危険を回避し、サポートカーで下山。塩別つるつる温泉へと戻って、お弁当のお礼を伝えた。
前方には青空すら見え、路面も一部乾いている場所すらあった。雪はあくまで、山の天気だったのだろうか。道の駅のバス停まで5km程度。せっかくなので、走らせてもらうことにした。


道の駅まで走る。暖かく、峠とは別世界のよう

のんびりとした田園風景の中、下り基調の道を気持ちよく走る。さっきまで雪の中にいたなんて、夢を見ていたみたいだ。ところが快適に走っていると、にわかに空が曇り、暗くなってきた。再び嫌な予感が、ふたりを包む。


天候が急変、横殴りの雪に襲われる。雪が痛い!

突然、大粒の雪が舞い始めた。天気の急変に戸惑っていると、横風に乗った雪が強烈に吹きつけてきた。露出している顔が、雪に叩きつけられて痛い。サポートカーは先行しており、自力で走り抜けるしかなかった。スタートした時は晴れていたのに! 横なぐりの雪に耐えながら、道の駅にたどり着いた。


道の駅に帰着!真冬のような雪になってしまった(レンズも水滴だらけ)

道の駅に着き、到着撮影をし、自転車を停めたら雪は止んだ。「こんなこともありますね」と智香さんは笑う。名物の「ホット生牛乳」と、揚げたて熱々の「白花豆コロッケ」を注文し、冷えた身体を温め、帰路のバスに自転車とともに乗り込んだ。


特産の高級豆「白花豆」のみで作られたコロッケ。豆の旨味が詰まっている


しぼりたての生牛乳。ホットにすると、牛乳の香りが漂い、いっそう風味を堪能できる

運転しなくてもいいのは、やはりありがたい。のんびりと進むバスのシートに身を委ね、北見バスターミナルを目指したのだった。


バスにバイクを乗せる。女性には少々重いが、袋に入れなくてもよいため、十分搭載可能だ


自転車の固定方法について運転手さんが教えてくれる

地元の方も、10月中旬にこれほどの雪が降るのは非常に稀だったと語っていたが、10月以降の北海道の峠は、天気の急変に気を付けるべし、ということを学んだ。
予想もしない雪に翻弄されてしまったが、路線バスでアクセスし、e-bikeを使えば、石北峠にトライできることは、証明できただろう。いずれにしても、忘れられないライドになったことは、間違いない。

今年、北見バスでは、終日バス乗り放題と自転車の積み込み放題がセットされた「サイクリストパス」が2660円で販売(今年は10月末で販売終了)されていた。このパスなら費用も抑えられ、レンタサイクルと組み合わせて挑戦することも可能だろう。日が長く、ゆったり過ごせる夏か、紅葉を狙える9月末あたりの時期をオススメしたい。
北見バスの自転車搭載サービスは、来年も実施予定とのこと。石北峠の景観は、実際のところどうなのか見てみたい方は、来年チャレンジしてみてほしい!

画像:編集部

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